ブルーバックス
『素数が奏でる物語』
2つの等差数列で語る数論の世界
西来路文朗=著 清水健一=著

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「素数を二分する」数列に導かれて、
巨人たちが魅了された「数の宇宙」へ。
深く、豊かな数学の響きを味わう――。

物語の主人公は、2種類の素数。
5,13,17,29,37…=「4で割って1余る素数」と、
3,7,11,19,23…=「4で割って3余る素数」。
一方は「2つの整数の平方和」で表せるが、他方は表せない。
一方はx2+1の素因数に必ず現れるが、他方は決して現れない。
両者の無限性を証明したオイラーの巧みな方法とは?
2つの素数の個性がわかる、連分数や平方剰余の相互法則、
ガウス素数とのふしぎな関係とは?
2つの等差数列{4n+1}、{4n+3}が紡ぎ出す「素数の神秘」。

素数の音楽会へようこそ

 1,2,3 …… と続く自然数の中で,まるで一等星のようにひときわ美しく輝いている数――それが素数です。「1と自分自身以外に約数をもたない」というシンプルな定義にもかかわらず,その存在は数学史に名をのこ遺す巨人たちを魅了し,探究の道へといざな誘ってきました。

 素数をめぐる問題は,いまなお未解決のものも多く,整数論の奥深い世界に分け入る試みが現在進行形で進められている,ダイナミックな対象です。

 本書では,一見単純そうでありながら,実は深遠な素数の世界を,2つの数列の“合奏”に耳を傾けながらみていきたいと思います。演奏者は,{4n+1} と{4n+3} という2 つの等差数列です。

 2つの数列が奏でてくれるのは,素数の深遠な姿を明らかにしてきた4人の巨人――ユークリッド,フェルマー,オイラー,そしてガウス――による名曲たち。ときに「素数の無限性」というロマンチックなメロディを響かせ,ときに「ピタゴラス数」との不思議な共鳴を紡ぎ出す名演奏の数々を,ぜひ楽しんでください。曲目が進むにつれて,{4n+ 1} と{4n + 3},それぞれの演奏者の個性の違いも楽しんでいただけることでしょう。

 ちなみに,ブルーバックスとしての本書の通巻番号「1907」は,{4n + 3} の仲間のひとりです。この素数は,いったいどんな個性を発揮してくれるのでしょうか。

 さあ,まもなく開演です。

はじめに

 本書は等差数列中の素数に焦点を当てて,素数分布,代数的整数論,解析的整数論の初歩を紹介し,他書にない整数論の入門書となるように企画されたものです。

 整数論では,数の性質を調べるためにさまざまな数学が使われます。とくに,代数的な概念を使って研究する分野を「代数的整数論」,微分積分や複素関数の解析学を使って研究する分野を「解析的整数論」といい,整数論の2つの柱となっています。

 本書では等差数列,とくに{4n+1} と{4n+3} の等差数列を縦糸,代数的整数論,解析的整数論を横糸に話を展開していきます。