奥田祥子『男性漂流』より【第5回】
~独身者に最も求められるのは、勇気を振り絞って一歩前に踏み出すこと~

【第4回】はこちらをご覧ください。

「婚活」からも弾かれる男たち

その後、木元さんとはたまに電話で話して近況を聞き、1年に一度ぐらいのペースで会う期間が4年近く続いた。

この間に「婚活」ブームはさらに広がり、自治体をはじめ、NPO法人や商工会議所、民間事業者などが様々な独身男女の出会いパーティーやイベントを企画するようになった。

内閣府の「結婚・家族形成に関する調査」によると、2010年時点で結婚支援事業に予算をつけている都道府県は66.0%(31団体)、市町村は32.5%(552団体)に上る。民間でもよくある、しゃれたレストランで会食をしながらのパーティーだけでなく、観光地や自然など地元の資源を活用した「春日大社の良縁祈願ツアー」(奈良県)、「星空コン」(沖縄県石垣市)など、工夫を凝らした民間顔負けのユニークな企画も多い。地域活性化も意図した民間事業者による、合コンならぬ、街全体を「会場」に見立て、基本的に同性2人組で参加する「街コン」と呼ばれるマッチングイベントの開催も、各地で相次いでいる。

いずれの場合も、男女双方に相手に望む条件などを聞いて回る「仲人役」が、現場に待機しているわけではない。参加者自らが積極的に動くことが前提になっている。

関西のある自治体が民間事業者と提携して実施した「寺社合コン」を取材したことがある。カップルやグループではしゃぐ男女を尻目に、「本気で結婚相手を見つけにきたのに、難しいもんですね」と残念そうに漏らす35歳の男性もいれば、「すごく楽しかったけど、この後2人で会えそうな男性はいはりませんでした」と複雑な表情を見せる31歳の女性もいた。

自治体でも行っている登録制の仲介事業に比べ、出会いイベントの利点として、「気合が入りすぎて硬くなりがちなお見合い」よりも、「気軽に楽しみながらの自然な出会い」を掲げるケースは少なくない。しかし、それだけに、「なかなかマッチングにつながらない」(ある自治体の担当者)面があるのも事実だ。

木元さんも、社会の風潮に背中を押されるように、一度だけ、地元の愛知県内で開かれた「アロマセラピー婚活」に参加した時のことを話してくれたことがあった。だが、それはせっかく「電話占い」依存から脱した彼を再び、奈落の底に突き落とすつらい経験だったようだ。
 

男性漂流 男たちは何におびえているか』
著者= 奥田祥子
講談社+α新書 / 定価950円(税込み)

◎内容紹介◎

語られざる男性たちの苦悩を描いて、ベストセラーになった前著『男はつらいらしい』(新潮新書)。男たちはさらに歳を重ね、結婚、育児、介護、自らの老い、そして仕事に葛藤していた---。ジェンダー論、フェミニズム論のような一面的な「男社会」論からはこぼれ落ちてしまう中年男性たちの悲哀と苦悩。10年にわたる取材を通して浮かび上がる、決して予定通りにはいかない人生の難しさ。少子高齢化、未婚社会、介護離職、老後破産・・・取材対象者の姿を通して見えてくるのは、日本社会がリアルに抱えるリスクの実態だった!

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