世界経済
なぜ李克強首相は中国経済の急減速を「新常態」と正当化したのか
全人代での習近平国家主席と李克強首相                 photo Getty Images

3月5日、中国の国会に該当する全人代(全国人民代表大会)が開幕した。2015年の成長目標は7%程度と発表され、李首相は今後の経済は“新常態”に入ったと宣言した。指導部は“新常態”という言葉を使って、景気の急減速を正当化する姿勢を示している。

また、同首相は中国経済が抱える構造問題を指摘し、景気の下振れ圧力が増大していることをアピールした。足許、中国経済は輸出や投資に代わる成長源泉を確保できていない。また、都市部への富の集中よる貧富格差拡大を解消することも容易ではない。中国経済は高成長時代を過ぎて、新しい成長過程を見いだせるかの正念場を迎えている。

成長急減速下の“新常態”

“新常態”とは、景気拡大を最優先に掲げた時代への決別だ。経済構造の改革を進めることによって、成長率低下の下でも共産党政権を維持することを可能にするパラダイムと言ってよいだろう。都市部への富の集中等が批判されてきた中国の国内事情を考えれば、何とかして一般民衆の支持を得るためのスローガンが必要になる。

内需拡大や経済の質の向上が達成されれば、それなりに“新常態”を正当化することは可能だろう。それが共産党指導部の考えであるはずだ。しかし、今のところ、中国のGDP(国内総生産)の大半は輸出と投資に依存している。安定した成長の要である個人消費はGDPの4割以下でしかない。

しかも、消費のほとんどは都市部に依存している。特に、不動産価格が下落する中、金融の重要要素である信用リスクの動向は懸念材料だ。拡大する下方リスクを眼前にして、痛みを伴う改革を実行することは容易ではない。“新常態”の本質を追求することは容易ではないのである。

“新常態”は景気の下方リスク、低成長率の容認と解釈することもできる。今後、“新常態”を追求するためには、不良債権処理などの“痛み”は避けられない。問題は、中国には社会の不安定化リスクがあるため、経済運営は相対的に安全な対症療法に陥りやすい。

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