中国
「習近平色」が色濃い全国人民代表大会の幕開け---無味乾燥な政府活動報告とネクタイの色にみる中国共産党のパワーバランスとは
〔PHOTO〕gettyimages

ネクタイの色に隠された大きな政治的意味

3月5日朝9時、北京の人民大会堂で、今年の全国人民代表大会(国会に相当)が開幕した。年に一度の国家の政治の季節到来である。

「人大」は毎年、3月5日に開幕するが、今年は偶然にも「元宵節」(春節が明ける15日目の佳日)と重なった。そのため、今年は佳いことがたくさん起こると、中国の官製メディアはしきりに報じている。

3月15日まで続く「人大」は、約2時間にわたる首相の「政府活動報告」で幕が開く。李克強首相にとって、昨年に続き2度目となる基調講演となった。国家主席である習近平総書記は壇上で無表情のままじっと首相の講演を聞いていた。

この日、私が注目していたのは、李克強首相のネクタイの色だった。おそらく赤か青のはずだが、はてどちらだろうと注視していたのだ。

果たして、李克強首相は、深紅のネクタイを締めていた。一方、壇上の後ろに控える習近平主席はブルーのネクタイを締めていた。

私は別に、中国の政治家のファッションに関心があるわけではない。ネクタイの色に、大きな政治的意味が隠されているのだ。

中国共産党の幹部にとって、絶対的に大事な色は、共産党の「革命の血色」を示す赤である。それは、清王朝時代に黄色(皇と黄が同じ発音)が絶対視され、皇帝以外は黄色い服を着られなかったのと似ている。ちなみに、最初の統一王朝である秦帝国の「国色」は黒だった。以後、歴代王朝はいずれも、「国色」を有してきた。これは中国古代哲学の五行から来るものである。

いまの中国のナンバー1は、言うまでもなく習近平主席(中国共産党総書記)である。だから、もしもトップの習近平主席が、「オレは赤いネクタイを締める」と決めれば、李克強首相は遠慮して、おそらく青のネクタイとなる。その意味するところは、習近平主席にしてみれば「オレ様が中国のトップだ」と幹部一同に誇示し、李克強首相は「悔しいけどオレはナンバー2だから仕方ない」と一歩引く感じだ。

ところが実際には逆だった。これは習近平主席が、「今日は政府活動報告を行う李克強同志が主役だから、花を持たせてやろう」ということで、初めに自分が青のネクタイを選んだ。それを知った李克強首相は、喜々として深紅のネクタイをつけたという構図と思われるのである。

ここから分かることはまず、習近平主席の権力基盤が確立したということだ。習近平主席は余裕があるからこそ、赤を李克強首相に譲ったのである。一方の李克強首相は、習近平主席との2年以上に及んだ権力闘争を、しばらく取りやめることにした。そして、一時的なことではあろうが、習近平体制の模範的な実践者としてパフォーマンスすることにしたというわけだ。

たかがネクタイと思うかもしれないが、そこまで推定できるのである。逆に、このように何かをとっかかりにしていかないと、中国政治はブラックホールのままである。加えて、李克強首相の顔色が黒ずんでいて冴えなかった。もともと肝臓と腎臓が弱くてアルコールを口にしないと言われる李克強首相だけに、気になるところだ。

さて、李克強首相がそう決意したのであれば、今年の政府活動報告は、「李克強色」が薄められた、すなわち「習近平色」の強い、無難で保守的で非個性的な内容になることが予想できた。そして思った通り、例年にない無味乾燥なものだった。

そのことを前提に、以下、1時間40分にわたった政府活動報告の要旨をピックアップしてみよう。

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