奥田祥子『男性漂流』より【第2回】
~「婚活」プレッシャーと「生涯未婚」ラベリングに苦悩する津村さん~

【第1回】はこちらをご覧ください。

第1章 結婚がこわい

婚活圧力と生涯未婚ラベリング

「結婚したくて相手探しに頑張っているのに、今のところ結婚できていない」ならまだしも、「『婚活』さえもしていないのか!」という「婚活」圧力が、結婚したいのにできない中年男性たちを脅えさせている。

さらに輪を掛けるように、「男性の5人に1人が生涯未婚」という統計結果(後述)は、「一生、結婚できない男」のレッテルを貼り付け、彼らの焦燥感や不安をなおいっそう煽っている。

結婚について、「たまたましていないだけ」と言い張っていた男たちに「できない」自覚を促した効果はあったかもしれないが、こうした社会からの強力なプレッシャーが「できない」からの脱却をますます阻んでいるように思えてならないのだが。

「結婚『できない』、それも『男』が、って、そんなのお前、取り上げられるわけないだろ!」

今から遡ること10年余り前、週刊誌の企画会議で男性の晩婚・非婚化に焦点を当てた特集を提案したところ、けんもほろろに却下されてしまった。あの頃、すでに未婚化は進んでいたが、「結婚という私的領域への立ち入り禁止」の風潮はメディアはもとより、職場や地域コミュニティー、社会全体にまで広く浸透したものだった。

加えて、晩婚化は女性の社会進出や、「男は結婚してこそ一人前」という社会通念の薄れなどを背景にした本人たちの意志であって、「できない」、つまり「能力不足」という切り口は厳しすぎる。それに男性読者の多いニュース雑誌としては、男たちから反感を買われては困る。そんな意見が大勢を占めた。

それから2年近く、懲りずに何度も取材希望テーマとして挙げ、やっとメーンの巻頭特集「結婚できない男たち」が掲載されたのが、2004年秋のことだった。

その後も、一ジャーナリストとして独自に取材を続けた。依然、男性の心理、行動面から探る報道は少なかったが、「結婚したいのにできない」問題は、少子化との関連で社会問題として浮上し、いつしか大衆の間で市民権を得ていた。当時のメディアの捉え方は、女性が結婚相手に求めるだけの経済力を男性側が持ち合わせていないこと、結婚後に希望するライフスタイルが多様化したことなど、経済的要因や女性の意識に焦点を当てたケースが多かったと思う。
 

男性漂流 男たちは何におびえているか』
著者= 奥田祥子
講談社+α新書 / 定価950円(税込み)

◎内容紹介◎

語られざる男性たちの苦悩を描いて、ベストセラーになった前著『男はつらいらしい』(新潮新書)。男たちはさらに歳を重ね、結婚、育児、介護、自らの老い、そして仕事に葛藤していた---。ジェンダー論、フェミニズム論のような一面的な「男社会」論からはこぼれ落ちてしまう中年男性たちの悲哀と苦悩。10年にわたる取材を通して浮かび上がる、決して予定通りにはいかない人生の難しさ。少子高齢化、未婚社会、介護離職、老後破産・・・取材対象者の姿を通して見えてくるのは、日本社会がリアルに抱えるリスクの実態だった!

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