【世界の中の日本 その3】 Gゼロ世界の中での日本の国際貢献

1990年代まで、世界のGDPの8割は日米欧などの先進国が占めていた。当時の世界秩序は、アメリカを中心とするG7で決めることができた。しかし、いまや中国、BRICSなどの新興国のGDPは世界の約4割を占めるまでに成長し、この世界の比重は様変わりしている(双方とも出典:IMF「World Economic Outlook」)。

ご承知の通り、G7はアメリカ、日本、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダという民主主義と自由主義経済の価値観を共有する主要7ヵ国が、経済問題や紛争など国際的な課題に関する政策協調のために開催するサミットだ。

1970年代に誕生し、冷戦終結後にはロシアを加えてG8となり、昨年のウクライナへの軍事介入でロシアが参加停止となってG7に戻ったが、今世紀初頭まではアメリカを中心とした経済力と軍事力を背景に、国際秩序の安定に力を発揮した。新興国の台頭とともにG7だけでは世界秩序を担えなくなり、2008年のリーマンショックによる金融危機を転機に、成長する新興国を加えたG20が始まったが、G20は政治的、経済的価値観も共有されておらず、世界秩序の運営役は担えていない。

第二次世界大戦後、一貫して世界の運営の中心にいたアメリカのリーダーシップが限界に達した今の世界は、新たな秩序の構築に向けた過渡期だろう。米中によるG2論も一時期もてはやされたが、どうもそうなりそうもない。世界はますます多極化し、各国でナショナリズムが台頭している。しかし、環境問題や地域紛争などの課題を考えると世界規模での連携が不可欠である。だからこそGゼロ世界において日本がリーダーシップを取り得る余地があると言える。

「日本が世界に貢献するためにはいったい何が必要か?」 その貢献方法を提案するのが今回の「行動」だ。

1. <世界秩序への貢献>自由・民主主義・法の支配・基本的人権といった普遍的価値を世界に広げる役割を日本が担え!

アメリカの政治学者イアン・ブレマー氏がGゼロ世界の警鐘を鳴らしたのは2011年だ。今、ロシアが武力を背景にウクライナのクリミア半島を自国に編入し、中国がベトナムやフィリピンと領有権を争う南シナ海で強引な態度を取り、イスラム世界でも無秩序な体制が放置されるといった現状がある。まさに大国アメリカも欧州先進諸国も世界秩序をコントロールできないGゼロ世界が、現実のものとして私たちの前に突きつけられているのは確かと言えるだろう。

Gゼロ世界は、さまざまな問題を起こしている。イスラム世界における現在のISILの台頭がその一例だ。欧米諸国は、政治がどう意思決定をしても悪い(Uglyな)結果となるがために「どこの国もできたら関与したくない。できれば見て見ぬふりをしていたい」という構造に陥っている。つまり、自国の国民は、「問題が飛び火するから、できたら関わらないで欲しい」と思っているがために、「テロと戦う」と言っても世論は賛成をしない。

しかし、それでは問題解決にはならず、状況は悪化する。 ISILを撲滅させなければ人質問題やテロなどにより秩序の破綻は進行する。つまり、ISILと戦って最終的には撲滅させなければならない。そのためには、アメリカを中心とした先進諸国とアラブ諸国が連携しなければならない。だが、その選択もUglyだから、各国とも気乗りしない。だからこそ、ISILは、好き勝手に暴れられるのだ。アメリカはやっと重い腰を上げて地上戦への関与を表明したが、国内世論は分かれており、簡単にはいかないだろう。

アメリカが国際社会への関与の度合いを低下させるのと対照的に、中国やロシアなどの普遍的価値を完全には共有しない国々が台頭し、世界政治に影響力を行使している。さらに北朝鮮という、国際法の普遍的価値をまったく無視するかのような、やっかいな隣国を抱えている。

「Gゼロ」がなぜ混沌とするのか、その原因は、米国が指導力を失い、新興国が必ずしも自由、民主化、法の支配の確立を経ずに台頭し、普遍的価値を共有せずに世界政治に影響力を行使しているからだ。

混乱が拡大するGゼロ世界において、日本は、「自由、民主主義、法の支配、基本的人権」といった普遍的価値を構築する役割を積極的に担うべきであろう。具体的には普遍的価値を共有する国と連携し、価値転換を促すソフトなアプローチをすることが重要だ。

また、日本が世界で積極的な役割を担えるよう、国内の世論を導いていくことも必要だろう。世論はどうしてもリスクを回避する方向に向かう。オバマ大統領はイラク撤退を訴えて当選したが、その撤退がISISを生んだのだ。世論が問題から逃げると、新たな脅威に対応できない。

世論を動かすのは、政治やマスメディアに限らない。意識を持ったリーダー達がそれぞれの立場で訴え、世論を形成していくことが重要だ。ぜひ日本では、普遍的価値を広める外交を皆で一体となって志したい。

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