奥田祥子『男性漂流』より【第1回】
~中年男性たちはいま、何におびえて漂流しているのか~

奥田祥子(おくだ・しょうこ)ジャーナリスト。1966年、京都市生まれ。1994年、米・ニューヨーク大学文理大学院修士課程(メディア論、社会心理学専攻)修了後、新聞社入社。男女の生き方や医療・福祉、家族、労働問題などをテーマに、全国を回って市井の人々を中心に取材を続けている。

はじめに

「なんで奥田って、男ばっかり追っかけてんの?」

メディアで働く友人たちからよく聞かれる質問だ。いまだ独身の中年女性ではあるが、プライベートについてではない。取材ターゲットとしての「男」である。

その答えをたどっていくと、「男性から世の中の深層や女性の実像が見えてくる」「社会的影響を受けて意識や行動が変化しやすい」「墓場まで十分に理解し得ない性だから」・・・。

それなりの理由はあるのだが、10年以上も男性が抱える悩みや問題を取材してきた今となっては、「無性に惹かれるから」という抽象的な表現が一番しっくりくるような気がしている。

20年ほど前、新聞社に入社し、男たちと肩を並べて仕事ができることが何よりうれしかった。新人時代、地方支局で女性は一人。冷静沈着で弱音を吐かず、毅然とした態度で政治家ら「権力」と対峙する先輩たちの姿に感化され、見よう見まねで記者修業を積んでいった。

警察や議員への取材では男性たちと区別されることが少なくなかったが、その悔しさもバネに、一日も早く男性のように仕事ができるようになりたいと思ったものだ。「男」は報道のプロフェッショナルとして、また社会を生き抜く性として、憧れの存在でもあった。

期せずして週刊誌に配属となり、社会で優位に立っていると思い込んでいた男性が、仕事や家庭、心身の不調など様々な問題に苦しんでいることを知る。長い沈黙を挟みながら、2時間、3時間とインタビューを続けていくうちに、最初は淡々と話していた取材相手が次第に不安や焦燥感、悲しみなどネガティブな感情を、時に顔を紅潮させ、涙を浮かべながら次々と吐き出していく。もしかすると、これが真の男たちの姿なのではないか。それは驚きであると同時に、記者としての好奇心を激しく揺さぶられた。
 

男性漂流 男たちは何におびえているか』
著者= 奥田祥子
講談社+α新書 / 定価950円(税込み)

◎内容紹介◎

語られざる男性たちの苦悩を描いて、ベストセラーになった前著『男はつらいらしい』(新潮新書)。男たちはさらに歳を重ね、結婚、育児、介護、自らの老い、そして仕事に葛藤していた---。ジェンダー論、フェミニズム論のような一面的な「男社会」論からはこぼれ落ちてしまう中年男性たちの悲哀と苦悩。10年にわたる取材を通して浮かび上がる、決して予定通りにはいかない人生の難しさ。少子高齢化、未婚社会、介護離職、老後破産・・・取材対象者の姿を通して見えてくるのは、日本社会がリアルに抱えるリスクの実態だった!

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