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はるやま商事 治山正史社長「心がけているのは、『スピード決断、スピード実行』。バンバン失敗し、バシバシと判断しないと、次が始められません。」

紳士服の『はるやま』『パーフェクトスーツファクトリー』などを展開する、はるやま商事の治山正史社長(50歳)に取材した。「はるやま洋服店」を創業し、関西に紳士服チェーンを築いた父の跡を継ぎ、全国にグループ443店舗まで拡大した治山氏。彼は、幼少期より心に刻んだ様々な思いをマネジメントの現場に活かしていた。

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はるやま・まさし/'64年、岡山県生まれ。立教大学経済学部を卒業し、'89年に伊藤忠商事へ入社。'94年にはるやま商事へ入社し、社長室長、取締役を経て'03年6月から現職。日本オリンピック委員会(JOC)のオフィシャルパートナーシップ企業となり、同時に機能性商品を多数製造販売など、進取の精神で業界をリードする ※はるやま商事のwebサイトはこちら

火事の功名

自分で言うのも恥ずかしいのですが「超前向き」です。仮に1万円入れた財布を落としたとしたら「このままじゃ、将来10万円入れた財布をなくすかもしれなかった。勉強代が安くすんでよかった」と考えます。でも先日、20年弊社に勤め、お客様からの評判もよいパートさんを表彰させてもらった時は驚きました。

彼女は受賞の挨拶で「20年前に火事で家を失ったから働きに出た。でもあの時に家が焼けなかったら、勤めにも出ていないし、これほど多くの方々に喜んでもらえることもなかった」と言ったんです。財布じゃなくて火事ですよ! 「すごい人がいるものだ」と感心しましたね(笑)。

勲章

私の実家は岡山県の小さな洋服店で、1~2階が売り場、3~4階が住居の、商店街によくあるパパママストア(夫婦で経営する店)でした。幼少期、鮮明に残っている思い出があります。

夜中、誰かがドンドンと扉をたたくのです。眠っていた両親が対応すると、目を真っ赤に泣き腫らした若夫婦でした。祖父を亡くされたらしく「礼服がないから、なんとか明朝までに用意してもらえませんか?」と言う。両親は「大変だったね」とお茶を出し、礼服を仕上げ、お客様は何度も「ありがとうございました」と礼をしてお帰りになりました。私は幼いながら何かを感じました。今は言葉にできます。「お客さまに『ありがとう』と言っていただけることは、小売りに携わる者の勲章だ」と思ったのです。

登頂! ジャージのような着心地の『ジャージニットスーツ』を着て、富士山頂でポーズを決める治山氏。登山だけでなくゴルフなどでも身体を動かす

教育の成果

弊社は「最も小さい男性用テーラーメイドのスーツ」を製造し、ギネスブックに認定されています。ジャケットの丈は19・7㎝とペットボトル程度の高さしかありません。じつは精密機械を作るような、高い技術力が必要なんですよ。通常のスーツで10針縫う部分は、きっちり10針縫っていなくてはいけませんからね。

ギネスを申請したのは母の影響かもしれません。母は私が高校生の時に亡くなっていますが、彼女はいつも自分が周囲に働きかけ、仲間を作り、人にできないことを実現していく人間でした。その母に「正しく生き、歴史をつくれ」という意味で「正史」と名付けられているので、照れくさいのですが、子どもの頃から今もずっと、歴史に貢献することを考えて生きています。

実感

地元の岡山大に進学しましたが、東京の空気を吸いたくて、あえて立教大に入り直しました。仕送りはゼロ(笑)。汚い木造四畳半のアパートに暮らし、強い西日があたるから「日焼けサロンの代わりにちょうどいい」などと笑っていました。必死でアルバイトもしました。交通量調査のバイトでしたが、これって、意外とキツいんですよ。排ガスで胸が苦しくなり、走る車のナンバープレートを12時間も見続けると目がチカチカしてきます。日当は6000円。お札を眺めながら「これがおカネを稼ぐということか・・・・・・」と考え込んだ。素晴らしい経験になりました。