急増する「モンスター社員」の実態を社労士の著者が生々しく描いた本、石川弘子・著『あなたの隣のモンスター社員』

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.055 読書ノートより

●石川弘子『あなたの隣のモンスター社員』文春新書、2015年2月

外務省時代にも「こいつはダメだ」という類の同僚や部下が何人かいた。外務省員は、外交官試験や国家公務員試験に合格しているので、ある程度の学力はあるはずだ。それに面接や身辺調査も行っているので、人格的に極端な偏りのある人は排除されているはずだ。しかし、現実にはそうならない。トラブルを起こす人には、自己愛が肥大している事例が多かった。

石川弘子氏が紹介するモンスター社員の事例は実に幅が広い。

<前職の退職理由については、人それぞれだ。

「親の介護が必要で、通勤が困難になったから」
「残業が多くて、身体がきつくなったから」
「更なるキャリアアップを図りたかったから」

これらの理由については、さらに突っ込んだ質問を投げかけて、相手の本音を何とか引き出したい。「通勤が困難だ」という場合、どのくらいの時間であれば許容範囲だったのか? 採用した場合、転勤には応じられるのか? 「残業が多かった」と言う場合、どの程度の時間外労働や休日出勤なら許容範囲なのか? 「更なるキャリアアップ」などといった、漠然とした理由の場合は特に注意が必要だ。具体的にどのようなキャリアを積みたかったのか? 前の職場ではどうしてそれができなかったのか? 質問を堀り下げることで、「前の職場はそういった環境を用意してくれなかった」「上司の理解がなかった」といった、周囲への不満を漏らすことがある。さらにそれについて深く堀下げて質問していくと、キャリアアップのためというより、人間関係の不満で辞めたということが見えてくることもある。面接を成功させるノウハウ本は数えきれないほど出ている。相手の模範回答をそのまま受け取ってしまうような事は避けた方が賢明だ。

実は、私も以前、失敗をしている。従業員の採用面接で、前職の退職理由を聞いたところ、「もっとやりがいのある仕事をしたかった。専門的な知識を身につけたかった」と回答した人がいた。彼女は大手企業を退職した人で、面接の際にもとても意欲的に見えた。退職理由について、今であれば、おそらくもっと具体的な話になるまで質問をするのだが、当時はそれ以上探らずに、採用してしまった。

ところが、採用してみると、彼女はとても自己中心的で、自分の仕事のミスを指摘されると、先輩に対しても反抗し、不貞腐れる。仕事はあまり出来る方ではなかったが、根拠の無い自信があるので、訳のわからない理屈で反論してくる。採用後に、前職の話をするときも、

「先輩たちを尊敬できなかった。あんな組織にいたら、私も腐っていく」

などと、痛烈な批判を繰り返していた。どうやら、前職でもその性格が災いして、先輩などから距離を置かれていたようだった。

そのうち、事務所内の空気も悪くなり、何かと反抗する彼女と同僚との間で、諍いが起こるようになり、彼女の仕事上のミスも多発し、業務に差し障りが出てきてしまった。最終的に彼女は、体調を崩し、「この事務所では、白分の能力を活かせない。小さな事務所では、自分のレベルアップも望めない」と言って、退職していった。私は心底ほっとした。

面接時に、退職理由についてもっと具体的に聞いていれば、前職への不満等から彼女の性格の片鱗が見えたかもしれない。私にとっては、代償も大きかったが、とても勉強になる経験だった。>(194~196頁)

モンスター社員は、高学歴で、頭がいいだけに、対応が難しい人たちだ。

このテーマについて深く知るための「連読」3冊
・今野晴貴『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』文春新書、2012年11月
・岡田尊司『回避性愛着障害 絆が稀薄な人たち』光文社新書、2013年12月
・マリー=フランス・インゴイエンンウ(高野優訳)
モラル・ハラスメント―人を傷つけずにはいられない』紀伊國屋書店、1999年12月

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.055(2015年2月25日配信)より

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