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マクドナルド、イオンがハマった落とし穴 「ボリュームゾーン不況」とは何か? 

いま、この国の経済が大きく変わろうとしている
黒田東彦・日銀総裁の「マジック」には限界が見えてきた〔PHOTO〕gettyimages

「売れない国内」「異常な低金利と円安」「実体なき株高」昨日まであんなに売れたモノが、まったく売れない

株価は15年ぶりの高値を更新、2万円も目前だ。一方で、景気が回復したという実感にはほど遠い。経験したことがない、この雰囲気。日本経済に何が起きているのか。

巨大企業が直面する新リスク

JT(日本たばこ産業)が、飲料部門から撤退すると発表したのはこの2月のこと。缶コーヒーの「ルーツ」、清涼飲料水の「桃の天然水」など、数々の先駆的なヒット商品を生み出してきた業界の雄の突然の退場に、社内外のざわつきはいまだ収まらない。

関係者によれば、JTが本格的に撤退を検討し始めたのは昨年末だという。ここ数年、飲料事業が目立ったヒット商品に恵まれず、直近では赤字に陥っていた中で、限られた経営資源を本業であるたばこ事業に振り向けるほうが得策との経営判断が下された形だ。

飲料業界はもともと、年間1000種類ほどの新商品が出る中で、2~3商品だけがヒットする「千三つ」といわれる世界。「そこへきて最近は、売れ筋商品の旬の期間がどんどん短くなり、もう耐えきれなくなっていた」とJT社員は言う。

「たくさんの新商品を同時並行的に開発しなければならないし、それぞれの新商品にはそれなりの宣伝費用をかける必要もある。そうしてヒトとカネを大量投下しても、ヒット商品はあっという間に消費者に飽きられてしまう。サントリーやアサヒなどの巨大ライバル企業とこうした戦いを続けていくには、体力が持たない。

幸い飲料事業はまだ小幅の赤字で済んでいた。手がつけられないほど消耗する前に撤退するという経営陣の今回の判断には、社内から『英断だ』という声すら上がっています」

どんな商品にも寿命はある。市場に産み落とされ、消費者に認められれば、急速に成長していく。そして定番化という壮年期を経て、いずれは老い、死を迎える。

経営者が頭を悩ますのは、いかに幼児を成年へと成長させるか、つまりはヒット商品をどう生み出すかだ。ひとつヒット商品が出れば、そこからは持続的に利益が上がる。そのカネを次の新商品の開発に回して、また新しいヒットを生んでいく。この好循環をいかに回せるかが、経営者の腕の見せ所となる。

しかし、いま経営者たちは新しい問題に頭を抱える。たとえヒット商品を生み出しても、その寿命が極端に短期化しているため、従来のビジネスモデルがまったく通用しなくなってきている。

商品のライフサイクルの短さは、「電気製品であればもって一年、食品などはせいぜい数ヵ月でヒット商品の寿命が終わってしまうほど」(企業のマーケティング事情に詳しいコア・コンセプト研究所代表の大西宏氏)。しかもそうしたブームの超短期化が、最も需要が豊富なマス市場、つまりはボリュームゾーンで巻き起こっているから、ただ事ではない。

そうした巨大市場で、昨日まで売れていたヒット商品がまったく売れなくなるという事例が最近頻発。先に見たJTが市場撤退を余儀なくされたように、大企業の生死を左右する新リスクとして日本経済に猛威をふるい始めている。

「たとえば外食産業では、三光マーケティングフーズが運営していた『東京チカラめし』の失速が好例です。『東京チカラめし』が始めた焼き牛丼は、牛丼市場で一時は爆発的なブームになり、様々なメディアで成功例として取り上げられました。しかし、焼き牛丼という新味に飛びついた消費者はあっという間に飽きてしまい、ブームは終息。1号店ができた'11年からたった3年しか経っていない昨年、事業を大幅縮少することになりました」(経営コンサルタントの鈴木貴博氏)

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