被害総額(14年)が過去最悪の559億円
被害者の約8割が高齢者 現金送付型が増える[特殊詐欺]

振り込め詐欺などの「特殊詐欺」の被害が止まらない。全国の警察が把握した2014年の被害額は過去最悪の約559億4000万円(前年比14%増)に上り、被害者の約8割は65歳以上の高齢者だった。警察庁は捜査態勢を見直し、高齢者の被害が目立つオレオレ詐欺などを捜査の優先対象とすることや有力情報には対価を支払う制度を導入する方針を決めたが、超高齢化が進行する中、見通しは楽観できない。警察幹部は「詐欺グループの摘発とともに、万が一だまされても現金を送らせないための仕組みを構築しなければならない」と話す。

特殊詐欺は面識のない人に電話を掛けるなどして架空の話を持ちかけ、銀行振込や郵送で送らせるなどして現金をだまし取る手口の総称。特殊詐欺とする分類を始めた10年と比べると、件数は約2倍の1万3771件、金額は約5倍近くに膨れあがった。

被害者のうち高齢者が占める比率も上がっており、11年は62・7%だったが、14年は78・8%に。人数は男性が2510人、女性が8030人だった。

詐欺の形態別では、現金を犯人に直接渡す「現金手交型」が236・3億円、レターパックや宅配便で送る「現金送付型」が212・1億円、銀行などの「振り込み型」が107・7億円となる。現金送付型だけが前年に比べて62%も増える一方、他の2類型は前年とほとんど変わらなかった。

現金送付型が増えるのには理由がある。レターパックや宅配便で現金を送ることは約款で禁じられているが、詐欺グループにとっては(1)現金自動受払機(ATM)の利用限度額の制約を受けない(2)被害者と顔を合わせる必要がなく、逮捕のリスクが少ない――といったメリットがあるからだ。

また、特殊詐欺全体では人口が多い首都圏などの大きな都府県の被害が目立つが、65歳以上の人口当たりの被害を調べると首都圏から離れた県でも被害は深刻だ。特に現金送付型では、滋賀や高知、岐阜、広島、福井、長野がワースト10位以内に並ぶ。

警察庁が新たに打ち出したのが捜査の力点を、オレオレ詐欺▽医療費などの還付を装ってATMを操作させる還付金等詐欺▽投資などの取引を装う金融商品詐欺――の3類型に重点化する作戦だ。被害額の約7割を占め、高齢者が狙われるケースも多く、広報啓発もこの3類型を特に強く訴えることにした。

一方、警察が摘発した容疑者は前年比12%増の1990人で過去最多だったが、首謀格は74人にとどまった。容疑者の内訳で最も多かったのは「受け子」と呼ばれる現金受け取り役の1016人で、このうち238人は少年だった。学校の先輩後輩などのつながりで誘われた少年も多い。

警察庁は摘発強化策として、暴力団捜査などの情報窓口として最高10万円が支払われる「匿名通報ダイヤル」を活用し、4月からは特殊詐欺に関する情報も受け付ける。しかし警察幹部からは「詐欺グループの全体像はなかなか見えず、捜査は後手に回っているのが実情。通常国会で議論が予想される通信傍受の対象拡大に特殊詐欺が含まれれば捜査に活用したい」との声も漏れる。