「脱水銀社会」実現へ年内締結目指す
政府、対策の関連法案を今国会に提出へ[水俣条約]

水俣条約への署名を終えアヒム・シュタイナー国連環境計画(UNEP)事務局長(中央)と握手する参加国の代表者=熊本市内で13年10月10日

人体に有害な水銀の使用や輸出入を規制する「水俣条約」を批准するため、政府は今国会に水銀対策の新法案と大気汚染防止法の改正案を提出する。年内の条約締結を目指している。「公害の原点」と言われる水俣病を経験した日本は、水銀を使わない脱水銀社会の実現に向け、世界の先頭に立つことが求められている。

水銀は常温で液体となる唯一の金属だ。揮発性が高く、大量に吸い込むと神経障害や呼吸困難を起こす。環境に排出されると分解されずに世界中を巡り、野生生物にも取り込まれて蓄積される。

水俣病は金属水銀より毒性が強いメチル水銀が原因で起きた。チッソ水俣工場(熊本県水俣市)の排水に含まれていたメチル水銀が魚介類に高濃度にたまり、繰り返し食べた人たちが発症した。

水銀は、小規模な金の採掘(ASGM)や塩化ビニル製造などの工業分野、歯科用の詰め物(アマルガム)、蛍光灯、体温計、血圧計などの製品まで幅広く使われている。日本をはじめ先進国では使用量が減少しているものの、途上国ではまだまだ多い。

国連環境計画(UNEP)によれば、世界の水銀需要量(2005年)は3万7985トン、人為的な大気への排出量(10年)は1960トンと推計された。大気への人為的な排出の49%がアジアからで、最大の排出国である中国だけで世界の3割を占めている。

自然由来を除く排出源別でみると、最も多いのはASGMで、全体の37%に達する。ASGMでは金鉱石に水銀を加えて鉱石中の金を水銀に溶かし、加熱して水銀だけを蒸発させ金を取り出す。水銀は大気中に排出され、採掘に携わる労働者が健康被害を起こすことが大きな問題になっている。

次いで多いのは石炭など化石燃料の燃焼で25%。水銀は化石燃料にも含まれているからだ。非鉄金属生産やセメント精製、廃棄物の焼却なども排出源となっている。