国家・民族
海外生活による「アイデンティティ・クライシス」は消えた!? 「グローバルシチズン」という新たなアイデンティティの誕生

Photo by Thinkstock

消えるアイデンティティ・クライシス!?

海外で子育てをする日本人の親の最大の心配の一つに「アイデンティティ・クライシス」がある。海外にいると、自分がどこの国に属しているのかを確かめたくなる時期が来て、子供たちは喪失感を抱き、深く悩むといわれる。海外で子育てをしている我が家もその対策を含めて長期の教育計画を常に練り直している。日本では帰国子女の存在とともに認識され始めたこのフレーズだが、世界ではアイデンティティ・クライシス自体が消えようとしているようだ。

先日、フランス留学時代の同期とシンガポールで再会し食事をする機会があった。彼自身は生粋のイギリス人で、奥さんは幼児の頃に台湾からアメリカに移住した台湾系アメリカ人。フランスで出会い、結婚して今は二人でシンガポールでビジネスをやっている。最初の子供はパリで、二人目はシンガポールで生まれた。

彼に日頃私が抱えている娘のアイデンティティ・クライシスについての悩みをぶつけてみた。その時、彼から帰ってきた答えはシンプルで自信にあふれた断定的なものであった。

「もううちの子やその周りの子たちにはそれはないよ。彼らの時代は"グローバルシチズン"っていうアイデンティティができているんだ」

彼曰く、彼の子供たちが通う学校(シンガポールで最も人気があるインターナショナルスクール)には、一言で「何人?」「どこから来たの?」という質問に答えられない生徒たちばかり。実際にうちの娘が通うインターナショナル・プレスクールでさえ、クラスの親で集まって自己紹介した時に、「両親が同じ国の生まれで、家族が同じ国籍を持っている」のは私たちだけだった。他の全員がミックス(日本でいうハーフ)。イギリスとインド、香港とスイス、オーストラリアと韓国、インドネシアとデンマーク、スペインと中国等々・・・。

「家内も私も日本人です。三人とも日本から来ました。国籍も日本です!」と自己紹介をするとワォーと絶滅危惧種に対する驚嘆のような歓声があがった。シンガポールでは両親が違う国籍でそのどちらとも違う国に住んでいる子供は全然珍しくない。というかそういう子供たちがたくさんいる。そういう子供こそを歓迎する学校もあり、そこに通う子供たちは「好きな国の休日を選び、好きな国のお祭りを楽しむ」という。

娘の同級生の親も「グローバルシチズン」というアイデンティティがすでに生まれていて、どこかの国に所属していないと喪失感を持つというアイデンティティ・クライシスは薄まってきている、ということを実感しているようだ。

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