大阪都構想のデメリット:「市の五分割」によって行政コストが上がるというリスク
文/藤井聡(京都大学大学院教授)

都構想のデメリットについての議論

大阪都構想を巡っては様々な「議論」の様なものがなされていますが、その中の少なからずの部分が冷静かつ理性的ものとは言い難く、詭弁による印象操作にまみれたものも多数あり、誠に残念な状況です。(たとえば、http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/02/24/fujii-133/http://satoshi-fujii.com/150217-3/http://satoshi-fujii.com/150208-2/、等を参照ください)

藤井聡・京都大学大学院教授

ですがそんな中でも、大阪市特別顧問の高橋洋一教授との本誌面上での誌面討論は、大変に理性的で実りあるものとなりました。

そこでは、『大阪市の税金2200億円が、別目的に流用されてしまう』という問題が論じられましたが、おかげさまでその論争を経て、当方がなぜそのような見解を持っているかを、より明確に公表することができました(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42056)。

そして今は、その論点についての(詭弁による印象操作が使いにくい)「書面」での反論を公募(http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/02/17/fujii-132/)しているところですが、少なくとも本稿執筆時点では、未だ、当方の手元には「冷静な理性的反論」は届いていない状況です。

いずれにしても、その「2200億円の流用問題」は、大阪市民にとっては大変に大きな「デメリットのリスク」を意味しています。

しかし、「都構想のデメリット」のリスクは、その一点にとどまるものではありません。

本稿では、そんな「都構想のデメリット」の中でも、特に重要なものの一つを、取り上げたいと思います。それは、「市の五分割」によって行政コストが上がるというリスクです。

大阪市の「解体分割デメリット」の存在

そもそも、「都構想」が実現すれば,大阪府と大阪市の二重行政が解消されて,行政が効率化され,コストが縮減できる──としばしば指摘されています.

しかし残念ながら、都構想が実現すると、二重行政の解消というような「メリット」が生まれる可能性だけでなく、新たな「非効率」が産み出されるという新たな「デメリット」が生ずるリスクも強く懸念されます。

つまり、協定書の記述を詳しくみてみると、「都構想による効率化」というイメージとは「真逆」のことが起こってしまうリスクがあるのです。そしてそのリスクをつぶさに考えた時、その非効率化リスクは、(議会では年間1億円程度しか無いのではないかとすら言われている)二重行政解消というメリットを遙かに上回るものなのではないか、という懸念が生じてくるのです。

その理由は複数挙げられますが、ここではそのなかでも特に重要な「行政の五分割に伴うデメリット」について、詳しく解説したいと思います。

そもそも、都構想が実現すれば「市と府」の二重行政は幾分解消するかもしれませんが、その一方で大阪市という「1つの役所」が解体され,特別五区の「5つの役所」ができあがり、それを通して行政コストがかえって高くなってしまう、ということが懸念されます。

なぜなら第一に、この5つの区役所には、似たような窓口や総務部を作らざるを得ないからです。

もしも、一つに統合できているのなら、1人でできる仕事も、5つものバラバラの区役所があるなら、それぞれについて1人ずつ各役所が雇わないといけなくなる、というケースが生じてしまいます。結果、項目によっては純粋に「五倍」ものコストがかかってしまうケースも生ずることになります。 

ですがこれは考えてみれば当たり前の事です。

しばしば、民間ビジネスの世界では「別々の会社を合併することで、効率化を図る」ということが行われていますが、今回の大阪市の五分割案は、そうした効率化の取り組みの「真逆」の取り組となっているわけです。ですから今回の都構想は、「非効率化」「効率悪化」を引き起こす側面を、明確に持っているのです。