【有料会員限定記事】ベンチャー企業の資金調達方法は銀行や投資会社の融資だけではない
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【質問】 私はこの6年間で新企業を6社、起ち上げました。(うち5社は黒字化、残り1社にはいまだ投資中です)。現在26歳で目下、ある業界を劇的に変えるプロジェクトのための資金源を捜しています。こういうときは上場すべきなのか、それともベンチャー投資家に頼るべきなのかを教えて下さい。(ジョーダン・バンダ)

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――ブランソン: まずあなたには、おめでとうと言うべきでしょう。経営は1社でも難しいのに、同時に何社も手がけているとは立派です!

いまの時代が起業家にとって素晴らしいのは、これまでと比べ、さまざまな資金調達の選択肢に恵まれていることです。フリーサイズで唯一のソリューションというものはありません。変動する多くの条件によって選ぶ道が決まるのです。

興味深いのは、資金問題への対処が人によって異なることです。最近ではふたつの方向からのアプローチが多く見られます。ベンチャー投資会社は、初期段階の資金調達にクラウドファンディングを利用してきた起業家から話を持ちかけられることがますます多くなってきました。すでに数千人の少額投資家がアイデアを支持しているなら、ベンチャー投資会社や銀行からの融資をいっそう引き出しやすくなるというわけです。

あなたのアイデアが業界をまさに劇的に変えるものなら、それだけで祝福されるべきです。しかし同時に難しさもあります。ユニークなアイデアをクラウドファンディングのプラットフォームに公開すれば、他人に真似されてしまうでしょう。特許獲得も安くはありません。

イーロン・マスク(※)の例でおそらくもっとも知られることになった、オープン・ソース・ムーブメントの一環として、起業家のなかには特許を一般に公開する人もいますが、あなたとってこれは最良の方法ではありません。あなたの場合は、自己資金をまかなうことで問題のすべてを避けることができます。それは自社のひとつを売却するというやり方です。

(※)アメリカの宇宙開発企業「スペースX」の創設者で、電気自動車メーカー「テスラモーターズ」のCEO

ヴァージンアトランティックを閉鎖しないための決断

ヴァージンレコードの売却。これが私とヴァージンの仲間たちが、90年代初めに決定し実行したことです。業界を劇的に変える、ヴァージンアトランティックという新事業の将来に必要な資金をどうしても獲得するためでした。競合する航空会社が、真のサービスを忘れ去っていたときに、傑出したサービスを顧客に提供するというのがこの新事業のアイデアでした。

この決断は容易ではありませんでしたが、いま考えても、やはりそれが最良な選択でした。私たちは岐路に立っていたのです。英国航空が私たちに取った卑劣なやり方での攻撃に対抗するための資金が、ヴァージンアトランティックにはどうしても必要でした。

しかし当時の私たちは、第三者やメガバンクに特別な資金投入を何度も頼めるような、強い立場ではありませんでした。たとえできたとしても、長くは続かなかったでしょう。

しかし私たちには巨大な利益をもたらすヴァージンレコードという会社がありました。資金調達にはその売却がもっとも安全な方法だと分かりました。ふたつを経営し続ければどちらも危うくします。その時点でヴァージンアトランティックを閉鎖し、2500人の従業員を放り出して、ヴァージンのブランドイメージをボロボロにすることもできました。しかしヴァージンレコードを売却することで、両社をさらに強大にすることができたのです。

この決断は私には実につらいものでした。私ひとりでできた決断ではありませんでした。同僚や友人、家族がいたからこそ一緒に切り抜けることができたのです。

あなたがどの道を選ぶにしても、決断の前に、信頼できるチームを整えていれば成功のチャンスはさらに大きくなります。

スイスのダヴォスで開催された世界経済フォーラムでこの件が頭によみがえりました。その折、アメリカのラッパーにして起業家である ウィル・アイ・アム(Will.i.am)と一緒に参加者の質問に答えました。

参加者が知りたがったことのひとつは、逆境にもかかわらずアイデアを実現化させるための苦闘に、私たちふたりを邁進させたものは何か、という内容でした。偶然にも私たちの答えは一致しました。それは「仲間の存在」です。

答えが同じだったということは、何かを物語っています。考えてみてください。あなたがベンチャー投資家に熱弁を振るったところで、彼らの反応はわかりません。銀行が希望額の融資に承諾してくれるかどうかも不明です。上場しても、何が起こるかわからないということでは同じです。

しかしそんなときにも、うってつけの友人や仲間が周りにおり、彼らが正直で、頑張り屋で信頼でき、才能にあふれ、あなたへの直言をためらわない人々なら、間違いなくともに最上の答えを得ることができるでしょう。幸運を祈ります!

(翻訳・オフィス松村)