メディア・マスコミ

「暮らしを見つめ直すきっかけをそっと置いて、小さな循環を生んでいきたい」---「灯台もと暮らし」編集長・佐野知美さんインタビュー

佐藤 慶一 プロフィール
メディア運営の裏側を公開するため、noteで有料マガジンを更新

個人が発信することで価値が伝わり、熱烈なファンがつく状態が理想

---これまで話してきた「灯台もと暮らし」とは別に、2014年11月からメディアプラットフォーム「note」を活用して有料マガジンを発信をしています。この目的や効果について教えてください。

「オンラインコミュニティ」として位置づけ、メディアづくりの裏側を公開・共有したいという思いからはじめました。ふたつの理由から有料にしています。ひとつは、買ってもらった方にだけ見せたい・書きたいというクローズドの場所を大事にしたいという思いがあります。

もうひとつは、チャレンジングではあるのですが、長期的なクラウドファンディングとして支援を集める場です。有料マガジンを購入してくれた方は仲間というくらいに捉えているので、相互にコミュニケーションをとりながら、つながっていけたらと思います。「灯台もと暮らし」ではそういった人がきっかけを見つけ、行動につなげていくことを目指しています。

しかし、noteではコメント以外での交互コミュニケーションが取れず、イベントに誘いたいとなったときに手段がありません。正直なところ、オンラインコミュニティとして深くつながる場づくりには苦戦しているところです。それでも、メディア運営の裏側を公開して、関心をもってくれた方から支援をいただき、仲間になってもらい、コミュニティメディアの成功例になれるように運営を続けます。

いま、手作りや伝統、職人などがどんどんなくなる時代に生きているので、note運営がうまくいけば地方での横展開も可能になるかもしれません。地方では情報発信をしていないことで埋もれているもの・ことが多くありますが、毎日の作業や雰囲気をnoteで発信したり、後継者を集めたりすることもできるようになります。ただ地方へ情報を届けるときにウェブでいいのか、という問いはついてまわるので、紙という選択肢も積極的に考えています。

---オンライン/オフラインでのコミュニティを通じて、起こしたい"コト"はなんでしょうか?

これまでになかった切り口で記事をつくり続けることで、自分たちがいいと思うものに対して、いいと思ってくれる人や共感してくれる人が日本や世界から集まる場を目指します。

情報がほしいだけでなく、情報を発信したい人、発信したいけどやり方がわからない人といっしょに情報発信ができたらとても嬉しいです。そういう人がアクションを起こせるきっかけや場をつくり、まずはいくつもの小さな流れや循環を大切に生み出していけたらと考えています。

---「灯台もと暮らし」を立ち上げて2ヵ月が経ちます。ここまでの反応や発見を聞かせてください。

神山町など地域取材の記事に共感が集まったり、長文記事がよく読まれていることが特徴です。「灯台もと暮らし」の話をすると、食いつく人の9割は女性といっても言い過ぎないほど。これからはもっと女性に偏り、"女性性"をもつ人に多く読んでもらえるようにしていきたいと思います。

---編集長を務めていて、どういった実感がありますか?

編集長ってなんだろう、とずっと考えています。いまは、感覚を研ぎ澄ますことが仕事だと思いながら、プレイヤーでありながらも全体を俯瞰して、メディアとして進む先を示しています。自分たちがやりたいこと、自分たちにしかできない切り口にこだわりつつも、noteの活用などは地方の人でも真似できるように運営を続けたいです。

いまでは記事を書く以外にも、イベントや特集の企画を組むことはやりがいのひとつです。だからこそ、書くことよりも、考えることが増えている実感があります。

---編集長としてどのような状態を理想として描いていますか?

個人が発信することで価値が伝わり、それぞれの書き手に熱烈なファンがつくような状態が理想です。暮らしというのはみんな共通のことですから、そのなかで多くのきっかけと場を提供できたらと思います。

---メディアとして具体的な指標として置いているものはありますか?

重要な指標として追っているのは、noteのマガジン購入者数です。「灯台もと暮らし」読者の100人にひとりくらいが有料マガジンを購入してくれたらと考えています。私たちの活動を知ってもらうと同時に、長期的な支援が集まる流れを生んでいきたいです。

メディアとしての規模は2ヵ月で約11万PV、2015年中に月間100万PVを目標に掲げています。現時点でいちばん読まれたのは「メディアの神山町が全てじゃない」という記事で、4000いいね!、5万PVが集まりました。この記事はインフルエンサーの拡散に頼らず広がった事例です。2番目は「 【徳島県神山町】旅で学んだ、自給したエネルギーが暮らしを豊かにするということ」という記事。3位が「渋谷のカフェ『ABOUT LIFE COFFEE BREWERS』 丁寧なコーヒーの一杯が、暮らしの豊かさを考えるきっかけに」という記事でした。リピーターが7割ほどを占める日もあるので、一度記事を読んだ人がまた戻ってくるようなメディアにしていきたいです。

---2015年にどんなことをやっていきたいですか?

今年中に物販をはじめる予定です。最初は文房具や桐生和紙などをオリジナルグッズとして販売したり、地方の特産物や伝統品をプロモーションしていくことも考えています。多くの人にとって、暮らしを考えるきっかけが見つかるメディアになるよう、毎日が1日目のように丁寧に記事を書き、大切なことを伝えていきたいです。

あくまで入り口は「灯台もと暮らし」というメディアですが、最終的には共感者に対してきっかけとなり、リアルな行動に反映してもらえたら、というイメージを持っています。早い段階でイベントスペースのあるオフィスを構えたいですね。

佐野知美(さの・ともみ)
1986年生まれ。新潟県出身、横浜市立大学国際総合科学部卒。金融系企業の企画営業、出版社勤務を経て、フリーのライター・編集者に。株式会社Waseiでは、2015年1月に公開した、これからの暮らしを考えるウェブメディア「灯台もと暮らし」編集長を務める。