【サメ辞典3:カグラザメ】3mを超える巨大ザメが巨大ザメに食べられる衝撃事件は、よくあること?!
カグラザメ

小学生は見た!

それはわたしが東海大学海洋学部の大学院生のとき。巨大生物が水揚げされたと連絡を受け、当時の大学研究室のメンバー総出で静岡・由比漁港に駆けつけたときのこと。宙につりあげられている、まっ茶色の巨体がわたしの目に飛び込んできた。

大きさはゆうに3mはあるだろう。今まで見たこともない生物だ。こんな時に限って海は引き潮で、陸と船の高低差が大きく、水揚げに時間がかかる。クレーンからたれる巨大生物をつり下げたロープは、今にもブチンッと切れそうなほどにテンションがかかっていた。そのときだった。近くにいた小学生がその巨大生物をみて叫んだ。

「アザラシだっ!!」

ロープで頭部と尾部を釣り上げた格好の茶色い生物は、水族館でよくみる、少し身体を仰け反らせたアザラシの格好を彷彿とさせたのかもしれない。ただ、明らかに違うのは顔だ。可愛らしい風貌のアザラシの面影は微塵も無く、身体の重さで半ば歪んだ頭部には、大きく裂けた真っ赤な口とそこから覗く鋭い歯。当時見学していた小学生がトラウマになっていないといいと思うのだが、それはまるでとてつもなく大きいアザラシのお化けに見えた。

その生物はカグラザメ。大きくなると最大5.5mにも達し、水深90m~1875mに棲む巨大深海ザメの一種。人を襲った例はないものの、下顎には1本1本がまるでノコギリのような形状の鋭い歯が並ぶ。人間が深海ザメに水中で出くわすことはまずないが、万が一にも海中で出会ったら、迷わず逃げた方がいい。

カグラザメの歯で肉を切る実験 動画
http://aqua2ch.net/archives/42577576.html

サメを研究する方法

サメの生態を調べる方法はおもに2とおりある。ひとつめは、死んだサメを解剖する。

一例ではあるが、サメがいったい何を食べて生きていたのか、胃の内容物からわかったり、木の年輪のように刻まれた脊椎骨にある輪紋を数えると、サメが何年生きているかを推定することができる。これに加えて体長などのデータを取ることができれば、サメの年齢によるサイズや食性の違いが見えてくる。

ふたつめは、生きたサメを観察する方法。サメ自体にカメラやタグを取り付けたり、 海の中にカメラを沈めて撮影する方法もある。

わたしが所属していた東海大学海洋学部のサメ研究室では、おもににひとつめの方法で研究を進めていた。このときに水揚げされたカグラザメは3mを越える大型個体であったため、大学の研究室内へ搬入することができず、近隣にある東海大学海洋科学博物館で解剖調査を行なうことになった。ビニールシートの上に横たえた巨体。この日、わたしは当時の研究テーマであるサメの寄生虫の採取を行ったことを記憶している。