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まさかこんなことで! 「寝たきり」の分岐点——ちょっとした「選択ミス」が、あなたと家族の人生を大きく変えていく

寝たきりは「なる」ものではなく、「つくられる」ものだという。意外なところでその分岐点は訪れる。「あのとき、こうしておけばよかった」と後悔する前に、知っておいたほうがいいこととは。

意外なことがきっかけに

高齢者の体調が急変したとき、自宅で様子を見るか、すぐに病院へ行って検査を受けるか。いま思えば、その選択が分岐点だった。

埼玉県に住む谷口和彦さん(仮名・76歳)の娘は、そのとき「すぐに病院へ行ったほうがいい」と判断した。

「昨年の11月、食事をして2時間ほど経ったときでした。突然、父が嘔吐したんです。風邪をひいていたわけでもなく、それまではいたって元気だったので、もし何かあったらどうしようと不安になって、すぐに救急車を呼びました」

近所の総合病院へ連れて行くと、医者から「高齢ですし、念のため入院して検査しましょう」と告げられる。その日から1週間の入院となった。

「検査しても大きな異常は見つからなかったのですが、退院してから、父はほとんど食事を摂らなくなりました。嘔吐してまた入院するのを恐れていたようです。ですが、なんとしても食べてもらいたかったので、私が介助して食事をさせるようにしました。

すると自分でできることが減っていき、トイレにも行けなくなり、布団の中で過ごす時間がどんどん増えていった。2ヵ月半で完全に寝たきりになってしまったんです。あのとき病院へ連れて行ってなかったら、こんなことにはならなかったのでしょうか……」

彼女はこう言って肩を落とした。

「寝たきり」は、脳卒中や骨折などが主な原因として知られている。早期からリハビリに取り組むことが重要だが、リハビリは大きな苦痛を伴う。この場合、「つらいから安静にしておく」か「無理をしてでもリハビリに取り組む」かが、「寝たきりの分岐点」になることは、よく聞く話だ。

しかし、これ以外の思いがけないきっかけが「寝たきり」につながることも多い。福島県立医科大学医学部の公衆衛生学講座教授・安村誠司医師はこう話す。

「じつは、寝たきりや重度の介護が必要になった高齢者の4人に1人は、とくにケガや病気をしたわけではないのに、徐々に寝たきりに進行した人たちなのです」

前述の谷口さんのケースがこれに当てはまる。「念のために」と入院させたことが裏目に出て、寝たきりになってしまった。入院中はほぼ一日中ベッドの上で過ごすため、筋力が急激に衰えることが原因だ。

「年齢とともに体力の回復能力は衰えてきます。80歳以上になると、寝たまま過ごすことで1日に2%の筋力が低下すると言われています。