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二宮清純レポート オリックス投手球界のエース金子千尋が明かした「常識破りの投球術」「僕がピッチングでいちばん大事にしていること」

2015年02月27日(金) 週刊現代
週刊現代

マウンドのマエストロ

完全無欠にして難攻不落。昨季は26試合に登板し、16勝5敗、防御率1・98でMVP、沢村賞、最多勝、最優秀防御率に輝いた。NPBの不始末で〝飛ぶボール〟騒動が起こった昨季、1点台の防御率を記録したピッチャーは両リーグで彼だけだった。

東北楽天が球団創設9年目にして初のリーグ優勝、日本一を達成した'13年、MVPに選ばれたのが現在、ヤンキースで活躍する田中将大である。投手部門のタイトルを総ナメにする中、ひとつだけ取り逃したのが最多奪三振だった。田中のタイトル独占を阻止したことで金子は存在感を示した。

大別すれば、ピッチャーには本格派と技巧派の2つのタイプがある。金子は後者だが、そんじょそこらの芸達者ではない。矛盾するような言い方だが、彼こそは「本格的な技巧派」である。技芸の深みと確かさにおいて、今の球界で彼の右に出る者はいない。

マウンドのマエストロ。金子千尋とは、そも何者なのか。

新潟県三条市生まれ。プロレスラーのジャイアント馬場は故郷の大先輩である。

小学4年時に長野市に移り住み、高校は地元の長野商に進む。2年の春、甲子園出場を果たしたが、2回戦で敗れている。

金子にはピッチングの師匠がいる。静岡県内のテレビ局に勤務していた矢野典佳という人物だ。

「今度、いいピッチャーが入ってくるので見てもらえますか」

長野商の監督(当時)・山寺昭徳に誘われ、ピッチングを一目見るなり、矢野は金子の素質にほれこんだ。

「これはすごいピッチャーだな……」

どこに惹かれたのか。

「千尋は僕の理論と合致した投げ方をしていた。足から順に腰、肩とスムーズに運動が連鎖していく。テークバックから足を踏み出し、股関節を回転させたところへ体幹を乗せる。そこから肩を回転させ、ヒジが出てきてボールをリリースする。何年も高校球児を見てきましたが、これだけムダのないフォームで投げるピッチャーは初めてでした」

かくも理路整然と話す矢野だが、彼に野球経験はない。野球好きが高じてメジャーリーグ通となり、独学で投球フォームや、そのバックボーンとなる運動力学などを研究し始めたというのだから、相当な変わり種である。

現在、金子が武器のひとつとするカットボールを教えたのも矢野である。

「実は米国に行った際、向こうの関係者から投げ方を教えてもらっていた。おもしろい変化をするボールだったんですが、教える相手がいなかった。

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