二宮清純レポート オリックス投手球界のエース金子千尋が明かした「常識破りの投球術」「僕がピッチングでいちばん大事にしていること」

いま、日本球界で最高の投手は誰か。こう問われると、多くの打者が「金子」と口をそろえる。剛速球でもなく、代名詞となるような変化球でもなく、「投球術」で打者を打ち取るその極意を明かす。

文句なくナンバーワン

大谷翔平(北海道日本ハム)が日本球界最速タイとなる162km/hのストレートを投じた直後だっただけに、一筋縄ではいかない、その変幻自在のピッチングは、ひときわ新鮮に感じられた。

昨年7月19日、甲子園。オールスターゲーム第2戦で全パの2番手として登板した金子千尋(オリックス)は3人のバッターに、14球すべて変化球を投じるという粋な演出を試みた。

14球の内訳はチェンジアップが4球、カットボールが4球、カーブが2球、シンカーが2球、スライダーが1球、スプリットが1球。トニ・ブランコ(横浜DeNA、現オリックス)はサードゴロ、雄平(東京ヤクルト)は空振り三振、村田修一(巨人)は当たり損ねのファーストゴロに仕留めた。

大谷のピッチングが「剛」なら、金子のそれは「柔」の極みだった。

「大谷君の後で僕が真っすぐを投げたところで見劣りするのはわかっています。だったら僕の持ち味で勝負しようかと思って……」

マウンド上での姿同様、ポーカーフェイスで金子は振り返った。

昨季、最後までオリックスと優勝を争った福岡ソフトバンクの選手会長・松田宣浩は率直に語る。

「文句なく、今の球界ナンバーワンのピッチャーです。彼は〝七色の変化球〟を投げ分ける。普通のピッチャーだと、だいたいストレートが5割、スライダーとカーブが2割ずつ、チェンジアップが1割といった割合になるのですが、彼はすべての変化球を万遍なく投げてくるんです。よほど手先というか指先が器用なんでしょうね」

ソフトバンクで松田と三遊間コンビを組む今宮健太は苦笑いしながら言った。

「特にチェンジアップは反則。投げた瞬間は真っすぐに見えるんです。バットを振り出してから〝あっ、チェンジアップだ!〟と気づく。でも、その時には、もう遅い。腕の振りが真っすぐと一緒なので見極めがつかないんです」

同じことは東北楽天の枡田慎太郎も語っていた。

「真っすぐを待っていて、チェンジアップが来たら、まずバットに当たらない。距離感が全く摑めないんです」

続いては東北楽天の中軸・銀次。

「金子さんの変化球はすべてストライクがとれるし、すべてがウイニングショットにもなる。もう素晴らしいとしか言いようがない」

いささか古臭い表現で恐縮だが、〝絶賛の嵐〟である。