急逝したニューヨーク・タイムズ著名コラムニスト、デービッド・カー氏が遺した「メディアの未来への処方箋」
急逝した当日、スノーデン事件を扱ったドキュメンタリー映画『シチズンフォー』についての自社イベント「TimesTalks」にてモデレーターを務めていたデービッド・カー氏 〔PHOTO〕gettyimages

ニューヨーク・タイムズの著名メディアコラムニスト、デービッド・カー(David Carr)氏が2月12日夜、編集室で倒れ、運ばれた病院で58歳の生涯を終えました。検死結果によると死因は肺がんによるものと報じられています。

コカイン中毒、がん闘病体験という過去を持ちつつも、2002年からはニューヨーク・タイムズのメディアコラムニストとしての鋭い分析力や彼独特の人柄により大きな存在感を持ち、ニューヨーク・タイムズ、そしてジャーナリズム業界の擁護者として、幅広く信頼され、愛されているジャーナリストでした。

この突然の訃報はニューヨーク・タイムズでは翌日の一面トップ記事として、そしてワシントン・ポスト、CNN、エコノミストなどの大手メディアでも大きく報じられました。また、彼と親交があった友人・業界の同僚、そして薫陶を受け各分野で活躍しているジャーナリストなどからは、カー氏との思い出や追悼、功績などを綴るメッセージが次々と送られ、インターネットやソーシャルメディア上で溢れかえりました。改めて彼が遺した貢献・影響力の大きさを思い知らされます。

カー氏が毎週月曜日に寄稿していた名物コラム『Media Equation(メディア・イクエージョン)』では、新しいテクノロジーがメディアに与える影響、伝統メディアのデジタル化への取り組みなど、常に最先端の動向や分析を届けてくれる業界羅針盤として多くの人に注目されているものでした。

カー氏がもたらしてくれた視点・分析は、メディアやテクノロジーの今後を考える上でも示唆に富む情報・知見が豊富に盛り込まれていて、早すぎる突然の死や今後このコラムを読めなくなることなどに対し、惜しむ声が世界各地から届けられています。ただ、カー氏の訃報、そして彼の今までの功績などに関し、日本国内ではあまり報じられておらず、これだけの知見がこのまま多くの人の目に触れられないままでいることに対し、とても残念であり、もったいないと感じています。

そこで今回はデービッド・カー氏が遺してくれた「メディアの未来への処方箋」として、印象に残っているメッセージや動画、さまざまな情報へのリンク(2014年秋から教鞭をとっていた大学院での授業のシラバス)をまとめておきたいと思います。

【1】ドキュメンタリー映画『Page One(ページ・ワン)』〜ニューヨーク・タイムズの1年間の密着記録

私がデービッド・カー氏の存在を知ったのは2014年春に偶然観る機会があったドキュメンタリー映画『Page One(ページ・ワン)』を通じてでした。「ページ・ワン」とは新聞の朝刊の一面のことで、同映画はアメリカにおいて新聞社の広告収入が激減し、新聞社の破綻や記者のレイオフなどが大きな話題になっていた2010年頃のニューヨーク・タイムズ社の中の様子を1年間密着したドキュメンタリー映画です。

封切りは2011年夏、すでに3年半前の映画ではあるものの、ツイッター、フェイスブック、ブログ、オンラインニュースメディア、iPad、ウィキリークスの登場などが世の中で大きな力を示し始める頃に、伝統的なジャーナリズムのあり方の大切さ、そして求められる変容などについて、丁寧に描かれている作品です。

カー氏は映画の中で取り上げられている4人のジャーナリストの一人ですが、彼独特のしゃがれ声で伝統的なジャーナリズムの大切さを雄弁に語り、いわばこの映画の主人公・ヒーローのような存在です。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら