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豊田章男社長の元部下(鈴村尚久氏(経営コンサルタント))が明かす「利益3兆円」トヨタはこう考えてきた
円安を追い風に業績は絶好調。過去最高の営業利益を記録した〔PHOTO〕gettyimages

「トヨタのやり方を真似すれば、ウチの会社も伸びるはずだ」。そう考える企業は多い。しかし、同じようにしているはずなのに結果が出ない。トヨタの生産現場を見続けた人物がその理由を語った。

やり方を固定化しない

'15年3月期の業績予想で営業利益2兆7000億円を達成する見込みのトヨタ。なぜ、トヨタは強いのか—。現場時代の豊田章男社長に部下として仕え、『トヨタ生産方式の逆襲』(文春新書・1月20日発売)を著した経営コンサルタントの鈴村尚久氏が「トヨタの考え方」を語り尽くす。

今、日本では「トヨタ生産方式(トヨタ・プロダクション・システム=TPS)」を学んでいる企業・組織が、規模の大小や業種を問わず非常に多い。しかし、コンサルタントに高額の報酬を払ってTPSを導入しても、成果が出ないばかりか、かえって弊害すら起きるケースが頻発しています。かつて日本郵政がTPSを導入したことで、職場が混乱して郵便物の配達が遅れたことも、その典型的な一例と言えるでしょう。

こうしたことが起きるのは、各社がTPSの本質を理解しないまま盲信的に導入しているからです。トヨタがやっている手法だから、それを真似れば収益性が上がるはずだと安易に考えている経営者がいますが、そもそも、その考え方自体が間違っているのです。

トヨタにおけるTPSの本質とは、自社の置かれた経営環境や抱えているリソースなど様々な条件の中から、何が一番合理的で最善なのか、自分の頭と手足を使って徹底的に考え抜くことです。「これがトヨタ流だ」と、やり方を固定化してはいけない。少なくとも私はトヨタ勤務時代からそう仕込まれてきました。ですから、トヨタの考え方とは何かと聞かれれば、「過去を健全に否定し、仕事の仕組みを抜本的に変え続けること」だと答えます。

TPSを象徴する言葉として、「改善活動」があります。この「改善」は、一般的には工場労働者の作業時間短縮などによって生産性を向上させることだと受け止められていますが、トヨタが考える「改善」はそれだけではありません。他社では労務費削減のために工場勤めの非正規雇用社員を増やす一方で、正社員の職場が肥大化しホワイトカラーが無駄な仕事ばかりしている企業が増えています。こうした企業では、作業の効率性を高める改善に取り組んでも、効果は期待できません。むしろ仕事の進め方を変革し、ホワイトカラーの働き方を見直すことこそが真の「改善」なのです。

またTPSを語る際によく引き合いに出されるのが、これも有名な「かんばん方式」という言葉。「かんばん方式」とは、部品を必要なときに、必要な量だけ調達し、最小限の在庫で効率的に生産することです。現在、この方式は在庫を持たない手法として世間で認識されています。しかし、「かんばん方式」が誕生したのは、在庫削減が第一の目的ではなく、生産能力増強のためでした。

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