【サウジアラビアの大富豪・アルワリード王子(1)】中東の石油を握る王家に生まれた「世界的投資家」。その富の原点とは?

イスラム教スンニ派過激派組織「イスラム国」の日本人人質殺害事件によって、中東情勢が緊迫している。

大半の日本人にとって、中東は遠い世界だが、日本経済にとって、中東産油国はエネルギー資源の生命線である。何しろ原油輸入の9割を依存しているのだから。
国別原油輸入量をみてみると、2012年度はサウジアラビアが30・4パーセントで1位。この国の地下には世界全体の5分の1、約2700億バレルの石油が眠っている。

日本の年間石油消費量が約20億バレルであることから換算すると、その石油埋蔵量がどれほど莫大なものかが分かるだろう。
この石油を一手に握っているのが、サウド王家。そもそもサウジアラビアという国名は、「サウド家」が支配する「アラビアの国」という意味なのだ。

今、サウド王家の一人の王子が世界的に注目を浴びている。
彼の名前は「HRHアルワリード・ビン・タラール・ビン・アブドルアジズ・アル・サウド」。

正式名は長ったらしいが、普通は「アルワリード王子」で通っている。
何故注目を浴びているかといえば、彼は世界の長者番付で、かつてビル・ゲイツに次いで第2位になったこともある億万長者なのだ。
サウジアラビアの石油があるのだから当然だと思われるかもしれないが、アルワリード王子の業種区分は「投資家」である。

2兆円を超えるといわれる莫大な資産のほとんどは投資によって築かれたのである。
現在、サウジアラビアの首都リヤドにそびえ立つ超高層ビル「キングダム・タワー」はアルワリード王子が率いる企業集団「キングダム・ホールディング・カンパニー」の司令塔となっている。

ビルの最上階に、グループの会長である王子の執務室があって、そこから世界中にM&Aの指令が発せられる。

彼の会社の投資ポートフォリオはこうだ。

「まず部門別では銀行など金融機関に対する投資が53%を占めている。その中心となっているのが米国のシティグループに対する投資である。王子は現在シティグループの3・9%の株式を持つ個人では最大の株主である。銀行の次に投資額が大きいのはホテル業であり、彼は世界的高級ホテルチェーンのフォーシーズンズ・ホテルズ・アンド・リゾーツのオーナーである。(中略)メディア、通信、ITも彼の重点投資分野の一つである。そこにはニューズ・コーポレーション、タイム・ワーナー、アップル、ヒューレット・パッカード、コダック、モトローラ、アマゾン・ドットコムなど一流企業の名前がずらりと並んでいる」(『アラブの大富豪』前田高行)

サウド家の王子はいかにしてかくも世界的な投資家となったのだろうか。

王族であることを武器に次々と公共事業を請け負う

アルワリードは、1955年、サウジアラビアの初代国王の21番目の息子であるタラールと、レバノン初代首相の娘モナとの間に生まれた。
由緒正しき血筋であるにもかかわらず、彼はサウド家の主流からはずれていた。
サウド王家のルーツはベドウィン族であり、26人いたといわれる初代国王の妻のほとんどもベドウィンの有力部族の娘であった。

ところが、アルワリードの父・タラールの母はアルメニア出身のレバノン人。正統のベドウィンではなかったのだ。
さらにタラールはナセル社会主義政権下のエジプトに一時期亡命していたことがあり、祖国に戻ったものの、一切の政治活動を禁じられ、王位継承権も返上していた。