[ウィンタースポーツ]
白戸太朗「農業×スポーツ!?」

第1回大会は約80名が参加する盛り上がり

「ファームクロス」というスポーツをご存知だろうか?
 恐らくほとんどの方が、聞いたこともないはずだ。それもそのはず、まだ生まれたばかりのスポーツで、初めての大会が富良野で開催されたのは今月15日だった。

 ルールを簡単に説明すると、雪の斜面を農業肥料が入っていた袋に乗って滑り降りるというもの。極めて単純なスポーツ、いや遊びと言った方が適当かもしれない。これに類する遊びは全国的にも珍しくなく、段ボールやビニールなど、様々なものをソリ代わりに滑った経験のある方もいるのではないだろうか。それをあえてネーミングし、大会にする。この一見、バカバカしいイベントに興味津々で行ってきた。

 週末の富良野、北の峰スキー場に男たちが集まり、論議しては滑り論議することを繰り返す姿があった。イベントプロデューサーの坂口弥寿久氏とその仲間達で、今回の「ファームクロス」の仕掛け人だ。袋をお尻に敷いて滑るという単純な競技だけに、コースレイアウトが面白さのポイントになる。また、意外にスピードが出てコントロールができないことから、怪我などが出ないような配慮も重要だ。大の大人が数人揃ってスコップと肥料袋を手に、論議したり、滑ったり。その光景は周りから見ると遊んでいるようにしか見えないが、本人たちは極めて真剣。翌日の大会に向けて、準備は延々と続いた。

 実はこのメンバー、坂口氏が富良野や上富良野で主催する自転車イベント地元の開催メンバーで、それが縁で今回も協力している。本来の仕事はバラバラだが、皆さんは地元を盛り上げることに熱い思いがあり、積極的にこのようなイベント作りに関わっているというわけだ。今回もボランティアどころか、自分たちの持っている機材や人脈をフル稼働させて大会作りにエネルギーを注いできた。そんなメンバーの思いが天に通じたのか、2週間ほど積雪がなく、硬いコースになっていたのが、前日から雪が降りコースコンディションは上々で当日を迎えられた。

“遊び”の要素は強いが、大人も勝てば大喜び

 そもそも「ファーム」とは農場、「クロス」とは戦いである。「このネーミングの意図は?」と坂口氏に聞いてみた。「生きる根源である“食”、その源である“農業”と“遊び”を何らかの形で結び付けたかった。練馬で『大根抜き競争』という地元農協主催のイベントに出たことがあるんです。長い大根を抜くのは年配の農業従事者にとっては大変、ならば逆にそれを遊びにしてしまう発想。抜いて楽しみ、収穫のお手伝いにもなる。更には地域の農業への理解や愛着も深まるという素敵な経験だった。こんな地元の食文化、農業と自分のやっているスポーツ、遊びの分野と結びつけるイベントができないかと考えた。それが形になったのがファームクロスです」。なるほど、遊びながら農業を身近に感じたり、理解するきっかけを作る。そして、子供も大人も外国人までもが一緒に遊ぶことで、交流が生まれ、引きこもりがちな冬の雪国のレクレーションにもなる。どうりで参加賞が地元で収穫された「たまねぎ」だったわけだ。