ブルーバックス
『創薬が危ない』
早く・安く・安全な薬を届けるドラッグ・リポジショニングのすすめ
水島 徹=著

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ガン、アルツハイマー病、インフルエンザ、
エボラウイルス病……なぜ、特効薬が現れないのか?

 動物で効いたのに、人ではまったく効かない。動物実験ではなかった激烈な副作用が現れた……。開発途中の新薬の多くが、臨床試験で失敗してしまう。21世紀に入り、これまでの創薬テクノロジーは大きな壁にぶつかっている。打開策はないのか? 本書は新しい視点からの創薬「ドラッグ・リポジショニング」を提案する。


まえがき

「最近新薬が生まれない」

「製薬企業の業績が思わしくなく、リストラをしているらしい」

「薬剤費が上がってこのままでは国民皆保険制度が破綻し、金持ちしか医療を受けられなくなる」

「予想外の副作用で、薬が販売停止になってしまった(多くの薬害被害者を出してしまった)」

「うつ病など、精神的な疾患によく効く薬はない」

 医療関係者でない読者の方でも、このような話を耳にしたことがあると思う。一方、医療関係者の方の中には、

「内視鏡など医療機器は日々進歩しているのに、処方している薬は昔とあまり変わらないなぁ」

「最近、製薬企業の社員の顔が暗いなぁ」

「学生を製薬企業へ就職させるのが難しくなってきたなぁ」

などという印象を持っている方も多いと思う。

 これらは一見別々の問題のようだが、その原因は実は同じであり、それは20世紀型の医薬品開発の限界である。つまり現在、医薬品開発は岐路に立っており、世界各国が新しい方法、つまり21世紀型の医薬品開発法を血眼になって探しているのである。

「なんか難しそうで、自分には関係ないなぁ」なんて思わないでほしい。新しい薬が出なくなるということは、これ以上医療が進歩しないということであり、ガンであれアルツハイマー病であれ、現在特効薬のない病気の患者さんは未来永劫救われないということである。また我が国が医薬品開発に後れをとると、我が国から高収益産業の代表である医薬品産業が消えてしまい、我が国の経済に深刻な影響を及ぼすことになる。

「困った時は、歴史に学べ、昔に戻れ」

 政治の世界などではよく言われることであるが、私はこの方法で21世紀型の医薬品開発法を確立しようと考えている。つまり、古くから使われている薬を最新の科学を用いて新しい薬に変身させる(別の病気の治療薬として開発する)という方法であり、本書のメインテーマである「ドラッグ・リポジショニング」という方法である。

 本書では、ドラッグ・リポジショニングが注目されるようになってきた背景やその方法、今後の発展のために解決すべき課題を述べるだけでなく、私自身の研究を含め、ドラッグ・リポジショニングによって生まれた薬やその開発秘話を紹介する。我が国では、「医薬品開発は特別の才能を持った特別な人たちが行う特別なこと」というイメージがあるようだが、本書を読んだ若い方には医薬品開発を身近に感じていただき、

「医薬品を開発し、人の命を救うことはやりがいがあって面白そうだな」

と思って、私と同じ道を歩む方が一人でも増えてくれたら、望外の幸せである。

 また最終章では医薬品の枠を越えて、21世紀型医療として注目されている、スマート・ヘルスケアについても触れたい。少子高齢化を迎えた我が国では、「病気は薬で治す」「薬は高くても仕方がない」「効くかどうかよく分からないのが健康食品」「病気は病院で治す」などの常識を打ち破り、安く楽に日常生活の中で病気になるのを防ぐ、スマートな医療(ヘルスケア)を実現する必要がある。スポーツ産業や食品産業など多くの異業種をヘルスケアに取り込み、新しい医療を提供しようとする動きにも注目してほしい。

著者 水島 徹(みずしま・とおる) 
一九六七年東京生まれ。東京大学薬学部卒業後、山之内製薬(現アステラス製薬)研究員、九州大学助手を経て、二九歳で岡山大学助教授、三六歳で熊本大学教授に就任。二〇〇六年、我が国初の創薬研究センターの初代センター長に就任。二〇一一年から慶應義塾大学薬学部主任教授。大学での教育・研究の傍ら、我が国のバイオベンチャーの草分け的存在であるLTTバイオファーマ(株)の取締役会長、及び中国の大手製薬企業である北京泰徳製薬の取締役副会長も兼務し、医薬品開発の先頭に立っている。「これからの医薬品開発は大学発」をモットーに、産学連携で画期的な新薬を作り、人の命を救うことが夢。
『 創薬が危ない 』
早く・安く・安全な薬を届けるドラッグ・リポジショニングのすすめ

水島 徹=著

発行年月日: 2015/02/20
ページ数: 256
シリーズ通巻番号: B1903

定価:本体  900円(税別)
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(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)