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「寿命」の研究 それは初めから決まっているんです
——自分は何歳まで生きるのだろうか、という不安にこたえる

長生きしようとどんなに努力しても、叶わない人もいる。もうダメだと思っても、奇跡的に一命を取り留める人もいる。医者にも説明できないことを、どう受け止めればいいのか。

命は人の手では延ばせない

人間の寿命というのは、医学の発展に伴い、適切な検診や治療を受ければ延ばせるはずだ。いや、そうではない、それぞれの人間の寿命は運命で定められているものだ—「寿命」についてさまざまな説が唱えられているが、確実なものは存在しない。

東洋哲学でも、「運命は生まれながらに定まっている」と主張する道家と、「努力によって人の運命は改善される」とする儒家の二大派閥が対立。2000年以上にわたって延々と論争が繰り広げられているが、いまだに結論が出ていない。

「寿命」とは、いったい何なのか。どうやって決まるものなのかを、改めて考えてみた。

どんな腕のある医師でも、「なぜこの人は助かったのか」と首をかしげることがある。「運命」と言わざるを得ないケースだ。長尾クリニック(兵庫県尼崎市)院長の長尾和宏医師は、あるときこんな経験をした。

「地元の医師会が運営する休日夜間診療所に、たまたま私が当番で詰めていた夜のことです。一人の男性がフラフラしながら訪ねてきた。彼が入ってきたとき、腰を抜かしそうになりました。私と顔がそっくりだったんです。背格好も一緒、年齢も当時45歳だった私と同じくらいで、まるで自分の生き写しに出会ったかのようでした」

その男性は、椅子に座るなりバタリと倒れ、そのまま心肺停止となった。心筋梗塞から致死性不整脈を起こしていたのだ。救急医療に長く携わっていた長尾医師は、直ちに蘇生措置を施し、大学病院へ連絡した。

「一緒に救急車に乗り込んで心肺蘇生を続けましたが、まるで自分に救命措置をしているような不思議な感覚でした。でも、男性はなかなか息を吹き返さない。30分経っても、容態は変わりませんでした」

心肺が停止してから1分経過するごとに、救命率は約10%ずつ低下していく。極めて厳しい状態だった。たとえ蘇生したとしても、重い後遺症が残るのは避けられない。呼吸も心臓も止まったまま、刻一刻と時間だけが過ぎていった。

そして、90分が経過。スタッフ全員が諦めかけたそのとき—。

「なんと、彼の心臓が再び動き始めたのです。しかも、どこにも後遺症がなく、2週間後には社会復帰されました。医学の常識では絶対に考えられない生還です。90分も心肺が停止して、後遺症もなく無事に蘇生した例としては『日本記録』だと聞いています。

たまたま救急医療に精通していた私がその日の担当で、なぜか私にそっくりな患者さんが現れた。ある意味、奇妙で奇跡的な巡り合わせでした」(長尾医師)