【有料会員限定記事】オバマ民主党、最後の賭け~資本主義者は資本主義体制を救済できるか?/トーマス・エドソール(コロンビア大学ジャーナリズムスクール教授)
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包摂的資本主義が大きく変える市場のルール

主だったアメリカの民主党員たちは、「包摂的資本主義(=inclusive capitalism)」の名で知られる一連の政策についての合意に達した。それらは、格差に対抗し、トップの富裕層が膨大な富を増やすことを抑制し、労働者階級と中産階級に経済的機会を与えることを目的とする、強力な市場志向型の経済アジェンダだ。

ホワイトハウスから議会、そしてリベラルなシンクタンクに至るまで、最近提出された一連の民主党の提案は、市場のルールを大きく変えることになり得る。その提案には、大きな税法改正、企業に対して生産性の成長に連動した支払いをするように圧力をかけるための法律、低所得労働者だけでなく年間所得8万ドルの世帯までを含む、払い戻し可能な税額控除対象の拡大などが含まれている。

イギリス労働党のエド・ボールズ氏

ローレンス・サマーズ元アメリカ合衆国財務長官、ならびに、イギリス労働党の幹部政治家であるエド・ボールズの報告書によると、政府が本格的に介入しないかぎり、所得分配構造の下半分で見られる格差と経済的リソースの欠如は、「生産能力的には不十分な需要、すなわち、国内総生産の規模を維持するうえで、消費者と企業の消費が少な過ぎる」状況を生むことになる。そのため、先進諸国は「21世紀の資本主義が一握りの者だけではなく、多くの者にとっても機能するよう、新たな社会的、政治的制度が必要だ」と書いている。

「包摂的資本主義」の擁護者によると、これは「われわれの経済システムをより平等に、より持続可能に、そして、より包摂的なものにする」ことを目指す取り組みだ。そして今、この国際的な運動は、アメリカの民主党グループに浸透しつつある。

ローレンス・サマーズ元アメリカ合衆国財務長官

カナダ人のイングランド銀行総裁であるマーク・カーニーは昨年5月に英国でおこなった講演で、包摂的資本主義の基本的根拠について、以下のように明確に述べている。

「革命が、つねにそれが生んだ結果を腐食させてしまうように、市場原理主義を野放しにしておくと、資本主義そのものの長期的ダイナミズムのために欠かすことのできない社会資本を食い尽くすことになりかねない」。5月にロンドンで行われたこのカンファレンス(※1)の参加者には、ビル・クリントンやグーグル会長のエリック・シュミット、オバマ大統領のトップ経済顧問を務めたサマーズなど、民主党支持のリベラル派リーダーたちの顔が見られた。

もっとも早い時期に包摂的資本主義を提唱した者として、ミシガン大学でビジネスを研究していた故C.K.プラハラード教授(※2)と、コーネル大学の戦略経営学専門のスチュアート L. ハート名誉教授(※3)が挙げられる。両氏は、これまで広く引用されてきた2002年の論文「経済ピラミッド底辺の富」のなかで、力のある企業は、所得分配構造の底辺にいる人々の商業的活動、雇用機会、信用へのアクセス、富の創出を促進することによって世界の貧困層がおかれている状況を改善することができるし、そうすべきでもあると主張している。彼らは、この世界の最貧困層に属している40億人の底辺の人々を「第四層」と呼んでいる。

(※1):http://www.inc-cap.com/
(※2):『ネクスト・マーケット』著者
(※3):『未来をつくる資本主義』著者

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