増える議員選挙の無投票
担い手不足深刻 13年は06年比2・8倍 毎日新聞調べ[地方自治]

13年3月の長野県野沢温泉村議選告示日の掲示板。定数8でポスターは7枚しかない

自治体議員選挙で無投票が増えている。毎日新聞が調べたところ、2013年に全国の市区町村で無投票となった議員選挙は選挙総数の15・7%に上った。「平成の大合併」が一段落した06年の5・6%に比べ7年間で2・8倍になっている。無投票の割合は特に地方で高い。この間、議会の総定数は約2割(8301人)減っている。地方を中心に自治体議会の担い手が不足し、有権者の投票機会が奪われている実態が浮かんだ。

まずは実例を紹介しよう。長野県の野沢温泉村は人口3768人(13年12月1日現在)。温泉は全国的に有名で、スキー場もある。13年3月19日、この村で議員選挙が告示された。だが、定数8に対し7人しか立候補せず、欠員1のまま7人の無投票当選が決まった。

実は、告示前の選挙の説明会には6陣営しか現れなかった。公職選挙法では、告示で欠員が定数の6分の1を超すと、立候補した者は無投票当選となるが、欠員分を補充する再選挙の速やかな実施が自治体に課される。

定数8の場合、立候補が6人しかいなければ再選挙となる。そうなれば議会不要論が出かねず、近隣に格好がつかない。苦しい財政事情で再選挙の費用負担は重い。村政の混乱は必至だ。現職たちは選挙準備どころではなくなり、各自で村民たちに出馬するよう説得を試みた。ある現職は、引退を表明した別の現職に「書類は全部整えるから」と続投を求めたが、断られた。「立候補予定者が他人を『出ろ』と説得して回るのも変だが、大騒動だった」と村議の一人は振り返る。

「君しかいない、という電話を何本ももらった」。最後に出馬を決意した元職の男性(62)は言う。スキー客はバブル崩壊後減ったが、1998年長野冬季五輪まで公共事業が盛んで、村はバイアスロン会場となり、活気があった。だが五輪後に衰退が本格化。合併話も浮上したが、住民投票で否決された。その後も合併を巡り村は揺れ続け、賛成派だった男性は10人が立った09年村議選で落選し、引退していた。

男性は周囲の熱心な説得に折れ、告示の前日、「他に誰も出なければ」という条件で立候補を決意した。告示日の午前9時に「(6人以外)誰もいないぞ」と電話があり、役場に行って立候補を届けた。その後、ペンで氏名を手書きしただけのポスターを100枚コピーし、同級生や家族と手分けして選挙掲示板に張った。選挙費用はコピーと画びょう代で計1500円。こうして7人が立ち、欠員1で再選挙はどうにか免れた。