「戦争実現国会」へ

『週刊現代』官々愕々より
〔PHOTO〕gettyimages

国会の論戦が本格的に始まった。「農業、雇用、医療、エネルギーなど岩盤のように固い規制に対し、強い決意を持って改革していく」。安倍総理はそう力強く語った。

過去2年間の大きな改革の実績はほぼゼロで、海外メディアも、「第三の矢はなかった」というほどの酷評。それにもかかわらず、昨年末の総選挙で安倍総理は厚顔無恥にも、「アベノミクスで改革を進めるのか、止めるのか。是非とも改革を進めさせてください!」と国民に訴え、マスコミも選挙前から安倍批判を封印した。多くの国民は問題の存在すら理解できず、自民大勝。選挙で味をしめた安倍総理は、あろうことか、今国会を「改革断行国会」と名づけたのだ。

しかし、今のところ、本当に大きな改革と呼べるようなテーマはない。

例えば、雇用。派遣労働者の受け入れ期限の撤廃や、残業代を支払わなくてよいいわゆる「ホワイトカラー・エグゼンプション」導入が打ち出されたが、いずれも経団連向けの政策に過ぎない。一方で、普通の企業でも横行しているサービス残業撲滅のための措置など、労働者のための改革はない。

医療介護分野では、病院や介護施設を一体的に経営する「持ち株型」法人制度を導入するというが、依然として、医療法人や社会福祉法人などにしか参入を認めず、株式会社は排除した。既得権益は守る姿勢だ。

エネルギー分野では改革どころか、原発がコスト的に高いことを事実上認めた上で、小売りの自由化や発送電分離などで競争が本当に生じても、原発だけは悠々と生き残れる仕組み作りを進めている。

事故が起きた時の損害賠償に上限を設け、十兆円から数百兆円にも及ぶかもしれない損害のほとんどを国民の税金でまかなう仕組みを作る。廃炉のコスト、核のゴミの処分についても「国が前面に出る」と称して、やはり、血税投入と消費者への転嫁の方向に進む。それでも不安だから、原発の電力の価格保証を導入する方向で、原子力ムラの完全復活である。

そう言うと、いや農協改革があるのではないかという声が聞こえそうだ。確かに、地域農協を束ねる全国農業協同組合中央会(JA全中)を普通の一般社団法人に転換し、地域農協への監査・指導権限をなくすことはいいことだ。しかし、コメの販売手数料をめぐる談合事件など、組合員よりも自分達の利益を優先する例が後を絶たない都道府県農協は温存。しかも、TPPではコメの関税引き下げは拒否して、米国から一定量を買い取って備蓄米とすることを目指している。

安倍総理が言うように、コメを輸出産業の柱にするなら、価格を下げ、生産量は増やし、付加価値を高めるという3つの戦略が必要だ。が、実際には価格低下防止のために生産量を抑制し、しかもその手段として飼料用米に膨大な補助金をつけて主食用米からのシフトを狙う政策を採る。もちろん付加価値の低い飼料用米が増える。3つの戦略とは真逆だ。
'13年のことを覚えているだろうか。6月に成長戦略を発表している途中で株価が暴落した悪夢を踏まえ、安倍総理は秋の臨時国会を「成長戦略実行国会」と名づけた。しかし、実際には成長戦略は全くの不発で、成果は国家安全保障会議設置法と特定秘密保護法だけ。終わってみれば、「戦争準備国会」と化していた。

「テロリストに罪を償わせる」と言う安倍総理。今国会も、「改革断行国会」だったことなど誰も思い出せないくらい、安倍総理がひたすら暴走する「戦争実現国会」になるのではないか。国民の不安は募るばかりだ。

『週刊現代』2015年2月21日号より

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