現代新書
トヨタの成功、ソニーの失敗、そしてアップルとグーグルの躍進。企業の成功と失敗の背景には「タレント」を生かす人材戦略があった!『『タレント」の時代』著者・酒井崇男氏インタビュー

 世界のグローバル企業でいま、熾烈な「タレント」獲得競争が始まっている。タレントの存在が結局、企業の成功と失敗を分けるからだ。

タレントとは何か? そしてタレントを生かすための仕組みとは何か? 『「タレント」の時代 世界で勝ち続ける企業の人材戦略論』をこのたび刊行した酒井崇男氏が、いまの日本企業に必要な人材戦略を語る。

「タレント」=価値を生み出す人

Q 「タレント」という言葉は、日本では一般的にテレビに出る芸能人を指す言葉ですが、本書では「組織の中で利益を生み出すことのできる、価値創造の中心になる人」という意味で使われていますね。こうした意味での「タレント」という言葉は、酒井さんのような企業の人事・組織運営などに関わっている人の間では、すでに一般的な言葉になっているのでしょうか?

酒井 ええ。人事の世界ではいままで人材のことを「ヒューマン・リソース」と言ってきたんです。でも最近では「タレント・マネジメント」という言葉を使うようになってきました。いまでは外資系企業だけではなく、日系企業でもそうした言葉を使うことは増えてきました。

それでも肝心の「タレント」については、まだきちんとした定義があるわけではありません。ただその言葉の意味するところは、組織の中で創造的な労働を通じて「利益を生み出す人」とか「価値を生み出す人」のことだという意味づけになっていますね。

Q 日本では以前、「これからはみんなプロフェッショナルを目指さないとダメだ」といった議論が流行したと記憶していますが、タレントとプロフェッショナルやスペシャリストの違いとは何でしょうか?

酒井 タレントと、プロフェッショナル・スペシャリストとの違いは、やっている仕事の違いというより、言葉のニュアンスが違っています。

プロフェッショナルは、どちらかといえば、決められた課題を間違いなくきちんとこなす人というイメージで使われている。知識はもちろん必要ですが、期待されている価値は最初から決まっている。一方スペシャリストは特定の分野の知識・技能に秀でた人という意味で使われています。

しかし、以前プロフェッショナルという言葉が流行った時期に、優秀なプロフェッショナルを掻き集めたのはいいけれど、結局日本から撤退することになった外資企業や、業績が悪化した企業も出てきました。結局いくら優秀なプロフェッショナルやスペシャリストを束になって集めても、新しい価値を創造して利益を生み出すことはできないことがわかってきたんです。

ではどういう人が必要なのか。

それはチームのプロフェッショナルやスペシャリストの力を引き出しながら、顧客が「これしかない。欲しい」と思うような、使ってみて満足するような新しい製品やサービスを生み出すことができる人、知識や才能を利益に変えることができる人です。つまりそうした人のことをタレントと呼ぶのです。