野球
二宮清純「勝てる投手になるために ~金子千尋の経験、権藤博の教え~」

真ん中に投げて最多勝

 オリックスの金子千尋投手を「日本一のピッチャー」と評するバッターは少なくありません。

 一昨年、パ・リーグの首位打者に輝いた福岡ソフトバンクの長谷川勇也選手も、そのひとりです。
「間違いなくナンバーワンのピッチャー。球種が多い上に、どのボールも一級品。どのボールでもストライクがとれ、どのボールでも勝負できる。金子さんを攻略するのは、至難の業です」

 金子投手が“大化け”したのが2010年のシーズンです。この年、金子投手は17勝(8敗)をあげ、初の最多勝に輝きました。6完封もリーグ最多でした。

 しかし、このシーズン、前半戦の出来は散々でした。6月が終わった時点での成績は4勝7敗と3つも負け越し、防御率は4.62でした。

マウンドでは「力を抜いて投げること」を意識しているという金子。

 本人は2軍落ちも覚悟していたそうです。
「たぶん、次負けたらファームだろうな、と思っていました。それで開き直ったんです。自分のボールを真ん中に投げて打たれたんだったら、それはもうしょうがないやって……」

 金子投手によると、それまではコースや高低を狙い過ぎていたそうです。カウントが悪くなれば、必然的にストライクを投げるしかありません。それを狙い打たれるという繰り返しでした。

 開き直った金子投手は、変化球のほとんどを真ん中目がけて投じました。しかし、真ん中を狙ったところで、なかなかそのとおりに行くものではありません。落ちたり、曲がったりすることで、うまい具合にアウトローやインローに散らばりました。

「そういうピッチングをするようになって以降、確か13連勝したんです。打たれたくないと思ってカウントを悪くするより、打ってくれという気持ちで真ん中目がけて投げた方がバッターを抑えられる。ピッチングに対する考え方を変えたことが最多勝につながったんです」