ISIL(いわゆるイスラム国)身代金要求と安倍首相<後編>
古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン Vol.117より

=>「ISIL(いわゆるイスラム国)身代金と安倍首相<前編>」はこちらからご覧ください

ISILの人質となった49人に人々は無事解放された---〔PHOTO〕gettyimages

トルコ領事館人質事件解決時の対応

古賀: そのときに例えば僕が思い出したのは、トルコという国がトルコの領事館が占拠され領事館員が人質になっていたという事件が去年、あったわけですね。そのとき、ちょうどその最中にアメリカや有志連合が空爆を始めるという時期と重なって、アメリカ軍から見ると、遠くの基地から出ていって攻撃するのは非常に非効率だし、お金もかかるしということで、できればすぐイラクやシリアに近いトルコの空軍基地を使わせてほしい。そこから出動させたいということを言ったのに、トルコはそれをずっと拒否したんですね。

トルコはNATOの一員です。ですから、日本よりも一段高い同盟軍、西側の中で一段高いところにいるんですけれども、それだけコミットしてるっていうことですけれども、そういう国でありながら、自分の国民が人質にとられている以上、そんな相手を刺激するようなことはしたくないということをものすごくはっきりとした価値判断をした上で拒否してるんですね。

それを拒否したことに対してアメリカ政府はものすごく怒って、もう口を極めたっていうぐらい、要するに外交的にはNATOですから同盟国。同盟国に対して、こんなこと言うかっていうようなことまで国防長官とか報道官とかがいろいろ批判をしたり、あるいはプレスにいろんなことをしゃべったりして、トルコって、とんでもねえ国だみたいな批判をしてたんですよ。でもそれにも耐えて人質が解放されるまで抵抗し続けたと。

僕はこの姿勢はすごく立派だなと思っていて、これこそやっぱり勇気あるリーダーだと思うんですよ。要するにアメリカから見りゃ、お前、何だ、腰抜けじゃないか。俺たちの仲間と言っときながら協力しないのか。アメリカ人も他の有志連合の国の人たちもみんな命がけで戦ってんだぞ。お前ら、何だ。民間人の命が惜しいからっていって、逃げるのかという非難に対しても、それを甘んじて受け入れて自分の国を守ったと。

日本はアメリカと一緒に戦争をする国

古賀: 安倍さんにはそういう勇気がなかったんだなと思うんです、僕は。やっぱりここは無理する必要はなくて、テロには「断じて許さないんです」というところまでで止めて、あとは「でもわれわれは余計な戦いに首を突っ込むことはしません」ぐらい言ったってよかったと思いますよ。あるいはそこまで言わなくても「われわれが1番やりたいことは戦いによって犠牲になった、これはどこの国にやられたとか、そんなことは関係ありません。1人の人間が戦いの影響で非常に悲惨な目に遭っているのであればその人を助けたい。それをやっていくのが日本人の考え方です。だから少し他の国とは違いますよ」というくらいのニュアンスを出してやっておけばよかったなと。

もちろんそれで、だからといってこの事件が起きなかったかどうかっていうのはよくわからなかったですけど、少なくとも今、世界中に流れているのは、僕はISILの人はそういう宣伝を見ても、あまり心配はしないんですけどISIL(いわゆるイスラム国)の外にいる世界中のイスラム教の人たち、あるいはそれ以外のキリスト教の人も含めた世界中の人たちが1つ間違えると、あっ、日本っていうのはアメリカと一緒に戦争する国なんだと。

で、ISILっていうのは、さっき僕は暴力団みたいだって言ったんですけど、やっていることは非常に野蛮なんですけれども、ただ暴力団と違うのはやっぱり背景として彼らのメンタリティっていうんですか、やってることはおかしいんだけど、言ってることの中で例えば昔、第一次世界大戦のときにヨーロッパが勝手に国境を決めたんだ。こんなものをチャラにするんだとか、あるいはアメリカは今までわれわれのところに年中空爆して、まったく罪のない民間人、子どもや女性まで殺したじゃないか。それに対する報復なんだと。こういうところに対しては共鳴する人たちはたくさんいるんですよ。

潜在的な支持層というのはあるので、次から次へと若者が入ってくる。潜在的に支持を集めるかもしれないような思想、考え方というのを持った組織であって、その組織が世界中に「日本っていうのは要するにアメリカなんですよ。アメリカの敵なら自分の敵だっていう国なんだ」っていうね。

これは「敵だ」と言われた側から見ると、あの動画に流れてましたよね。8500キロも離れたところからやってきて、俺たちと戦うみたいなことを言っている。こんなばかなことを言ってというような意味合いだと思うんですけれども、要するに彼らから見ると日本って関係ないだろう、もともと。全然離れた国だし、歴史的にも関係ないだろう。イスラムとキリストの戦いとも関係ないだろう。その日本が何か、のこのこやってきて、それで「私はアメリカの友達です。あるいはヨーロッパのお友達です。アメリカの敵は私の敵なんです」という宣言をしているというふうにとられているんで、ものすごくアメリカと一緒に敵をどんどん増やしていくと。

日本っていうのはもちろん軍事力で一緒にやりましょうっていうことは今までやっていなかったわけですから、同盟的なお友達っていうのは少ないわけですよね。ですけど逆に敵も非常に少ない国だったと思うんですよ。日本を敵だと思ってる国は非常に少ない。アメリカっていうのは味方も多いかもしれないけど敵も非常に多いんですね。そのアメリカの敵の部分を全部自分たちに背負っていくような、そういう流れになってきたなというふうに思います。・・・(以下略)

(※2015年1月22日・動画収録)

古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジンVol117
(2015年2月6日配信)より