【有料会員限定記事】「寄せ鍋」の極意

調理と仕切りがもっとも難しい「寄せ鍋」

寒い日々が続くと鍋の出番が増える。いまの時期、もっともお目にかかるのが「寄せ鍋」だ。
ところがポピュラーな鍋のひとつである「寄せ鍋」は、実はもっとも調理とその仕切りが難しいとされていることを知る人は少ない。例えば店に行くと、大抵の場合はすでに卓上に鍋がセットされている。蓋を開けると、海老、鶏肉、魚、豚肉、野菜類、茸類、豆腐などさまざまな具が窮屈そうに身を寄せ合っている。

この光景を見た瞬間に絶望の淵に立たされる。この状況で仲居さんが現れ、「火をつけますよ。湯気が出るまで蓋はとらないでくださいね。」と言いどこかへ行ってしまう。この間鍋の中では、海老や鶏肉が身を硬くし、魚は身を崩し、三つ葉の食感と香りは奪われ、春菊の色は変色し、すべての具材からエキスが抜け出るという蛮行が進んでいる。

それなのに「待て」と言うのか。構うものかと蓋に手をかけ鍋の中を覗くと「さわらないでくださいと言ったでしょ」と、またどこからか仲居さんが現れて怒られる。ようやく許可され蓋を取ると、汁は濁り、海老は硬直し、歯応え命の青菜やエノキは柔らかく、豆腐にはスが入り、魚はばらばらに砕けている。さらにそこからなおも加熱し続けるのだから悲劇は進む。その末路は悲しい。

この問題を憂慮して、私は去年『間違いだらけの鍋奉行』という本を上梓した。「寄せ鍋」は、
  (1)それぞれの具材の最適加熱時間に配慮し、最適のタイミングで食べる。
  (2)汁を最後までおいしく食べる。
この2つが基本だが、店でも家庭でも実践しているところは少ない。

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