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より良い企業文化を作ることが成功へのカギ

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【質問】 2人の親友と事業を始めようと考えていて、すでに多くの事業アイデアを抱えています。グループで新会社を立ち上げる場合、どのような環境にすればいいのでしょうか? 会社らしくするべきでしょうか、あるいはもう少しくだけた雰囲気づくりを目指すべきでしょうか?(グル・ビグネッシュ、インド)

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――ブランソン: 新規事業の起ち上げはストレスも大きく過酷な作業です。友人や家族と共同で事業をはじめるというのは、その重い負担を彼らとの絆が和らげてくれるという点でとても良い考えです。

グルさん、あなた方は良いところに気づきました。それにお互いに尊敬し合い、事業アイデアも豊かで、実行する勇気もお持ちのようです。どのような企業文化を作るかを今から考えておくのは、実に賢明なことです。企業文化に関する明確な方針をつくることは創業における重要なステップなのです。

ヴァージン発足当初、企業文化について気にも留めていなかった私たちは、単に幸運だったとしか言いようがありません。実際に、ヴァージンの歴史をご存じの方なら誰でも私たちの企業文化が大きく成功に貢献してきたことを知っているはずです。当初は会社設立も考えておらず、ましてや企業文化を考えるなんてことは、まったく頭の片隅にもありませんでした。以前にも述べましたが、ヴァージンという会社は、私たちがロンドンではじめたレコード店に備え付けのビーンバッグの上でゴロゴロしていた時にふと思いついた会社名なのです。

ヴァージン創立後は資金繰りに追われ、オフィス賃貸料とスタッフの給料を支払えるだけの売り上げがあったかどうかを毎週末確かめなければならないような状態でした。そうは言っても、そんなことで、くよくよしたりはしませんでした。事業を継続できた理由は、毎日が楽しくて仕方がなかったからです。仲間のみんなと一緒にいることが、単純に楽しかったのです。みんなが幸せだったので、まるで自分たちの家族のようにヴァージン・レコードのお客さんに応対しました。もちろん、顧客は大満足だったので、客足が遠のくこともありませんでした。

気づいたら店舗も増え、レコードの売上も伸びていました。仕事は大変でした。事業のさまざまな問題が心配で、みんな何日も眠れない夜を過ごしました。しかし、再度繰り返しますが、自分たちのやっている事を楽しめたからこそ続けられたのです。

ヴァージンが「まじめに楽しむ」文化を維持できた理由

ヴァージンの成長とともに、「真面目に楽しむ」という姿勢が企業の推進力となっていきました。自分たちの仕事やアイデアに情熱を注ぐことで単なる「通常の営業」から脱し、より革新的な銀行や鉄道、電子通信、航空会社、さらにその他さまざまなベンチャーを世界中で創造していくことができたのです。

ヴァージンがこれまでに起ち上げた、300社以上ある会社のすべてに、この「まじめに楽しむ」という企業文化をいかにして継続させてきたのか?と問われることがよくあります。その答えは、ヴァージンファミリーに新たに加わるすべての企業が、ブランドの気風と性格に合致しているかどうかを入念に確認しているからです。

これには、世界や広範囲な地域に建設的な変化をもたらそうとする意欲があるかどうか?ということも含まれています。こういったイノベーションを起こそうとする、私たちの努力の基盤となっているのが、非営利団体のヴァージン・ユナイトで、この組織は同じような目的意識を持つ会社を支援しています。

あなたの会社も、成長していけばそういったソリューションを考えることもあり得るでしょう。もちろん企業文化というものは、ヴァージンのように幸運だけで育まれるものではありません。多くの場合は卓越したリーダーの継続的な指導による結果です。これの良い例がサウスウェスト航空の創立者ハーブ・ケレハーです。

ハーブが1960年代に自分の新会社の構想を練っていたとき、競争の激しい航空業界で生き残るには低価格だけではなく、それ以上の何かを提供しなければならないことに気付いたのです。時がたつにつれて、サウスウェストは楽天的でおもしろく航空業界のリーダーだ、という評判を得ていき、特に客室乗務員の人当たりの良さは、ほかの航空会社からも高い評価を得ました。アメリカで働くにはもっとも優れた会社の1つ、と長年認められてもきました。最高のサービスを提供することに情熱を燃やし続ける人を採用すれば、従業員と顧客の間に強い絆が生まれ、成功もそれに続くものとハーブは理解していたのです。

こういった例を考えても、あなたの新事業が成功するにはやはり従業員の幸福感が不可欠です。すべてにおいて家族的で遊び心のある環境作りを目指すべきではないでしょうか。
こういったことをすでに友人とわかりあえているなら素晴らしいことです。有名な経営コンサルタントのピーター・ドラッカーはかつて「文化は戦略を食う(※)」と述べました。文化は事業のなかでもっとも過小評価されている要素といって良いかもしれません。指導者がどれほど優秀で洞察力があり遠大な計画を持っていたとしても、強い企業文化で下支えされていなければすべて崩れさってしまう可能性もあるのです。

グルさん、新規事業がうまくいくことを祈っています。楽しく開放的な雰囲気を社内に作れば、あなたの航海は楽しいものとなり、成功する確率もより大きくなることでしょう。

(※):「製品計画や戦略がどうであれ、大切なのは社員が何を信じ、どのような価値観を持っているかということだ」という意味。


(翻訳:オフィス松村)

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