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高齢者たちが微笑む理由/デイビッド・ブルックス

「Why I Hope to Die at 75」 by Ezekiel J. Emanuel---theatlantic.comより

幸福度のピークは82歳からはじまる

数ヵ月前、エゼキエル・エマニュエルはアトランティック誌に、自分はすべてのことを考慮した結果、75歳くらいで死にたいと書いた記事を載せた。彼は、その記事のなかで、悲しく衰えていくことに耐えるよりも、自分のすべての力が残っているうちに寿命を終えたいと述べている。

問題は、仮にエゼキエルが75歳で亡くなったならば、彼は人生でもっとも幸福な年月をみすみす逃してしまう可能性があるということだ。研究者たちが一般の人々に向けて自分の幸福度の査定を求めたところ、20代は幸福度を高く評価をした。中年になると惨めになっていくので幸福度は下降線をたどり、50歳あたりで最低水準になる。ところが、その後は幸福度が急上昇し、老年に至ると若者の水準を凌ぐようになる。自己の幸福度評価が一番高いのは、82歳から85歳の年代の人々なのだ。

現在ではよく知られるようになった、このUカーブを研究する心理学者たちの間では、高齢者の幸福度が高まるのは脳の変化によるものと指摘する傾向が見られる。たとえば、たくさんの人の顔を見せると、若者は無意識のうちに恐ろしい顔に目を向けがちだが、高齢者は幸せそうな顔に惹きつけられる。

一般的に、高齢者はそれ以外の年代の人々よりもリラックスしている。彼らは将来について思い煩う必要がないので、日常的な活動のなかにより多くの喜びを見い出すのだ。

高齢期における幸福感に関する多くの研究で私が問題だと思う点は、それらがあまりにも決定論的であることだ。そこでは感情面での高齢化が、あたかも肉体の高齢化のように扱われる。つまり、人々に起こる生物学的、化学的、進化上のプロセスのように扱われるのだ。

私は、高齢者の幸福感は「状態」ではなく、むしろ、彼らが特定のスキルを体得することにより、努力を通じてより良く生きれるようになったという「成果」だと考えたい。人間は、着実に人生の問題にうまく対応できるようになっていくものだと思いたいのだ。中年期には、ティーンエイジャーの子どもがいるなど、コントロールが難しい、ストレスの大きい問題に直面している。しかし高齢期になると、対処すべき問題に関してコントロールの力が増すだけでなく、対応の仕方もうまくなるのだ。

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