ゆうちょ、かんぽと同時上場へ
売却益は東日本大震災の復興財源に[日本郵政]

日本郵政は今年秋にも傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険と共に株式を上場する。〝親子〟会社の同時上場は極めて異例。6月ごろに条件など詳細を決定し東京証券取引所に申請する方針だ。日本郵政の西室泰三社長は昨年末の記者会見で「民営化の本当の意味の第一歩がようやく始まった」と話したが、これからどんな「成長戦略」を示すのか。傘下の日本郵便会社は赤字に陥っている中で、健全な民営化の進展に向けての課題も少なくない。

政府が100%保有する日本郵政の株式については、07年施行の郵政民営化法で3分1超は政府が保有するが、残りはできる限り早期に売却するとされた。民主党政権になって「郵政株式売却凍結法」が成立し、いったんは売却の動きはストップしたが、12年5月の同法廃止で売却は解除された。売却益は復興財源確保法で東日本大震災の復興財源に充てることが定められている。また、日本郵政が100%保有する金融2社の株は当初17年9月までに100%売却し2社は完全民営化することが示されていたが、12年施行の改正郵政民営化法で、できるだけ早い時期に100%売却するとされた。

昨年末に日本郵政が発表した売却・上場スキームは(1)時期(2)売却規模(3)金融2社株式の売却収入の使途――の3項目。

(1)では15年度半ば以降、日本郵政の株式売り出し・上場にあわせてゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の金融2社の株式も同時に上場を目指すとした。具体的な時期は明示していないが、規模や条件の決定など準備が完了するのは6月ごろになり、その後、有価証券届出書を提出し、東京証券取引所に上場申請する。審査を経て実際の上場、売り出しは8月~12月になる見込みだという。

また、親子同時上場は利益相反などの問題から疑問視する声もあり、これまでに前例はないが、金融2社を合わせて上場のための情報開示することにより「株式の売り出しの際に金融2社の評価が日本郵政の評価にも反映され、株式価値が適正に評価される最上の方法」と説明している。

(2)については「売却規模は市場に混乱を生じさせることなく、円滑な消化が可能と見込まれる規模」とし、有価証券届出書の提出時に公表する、という表現にとどめた。しかし、財務省は、2000年以降企業の株式売り出しは最大でも1兆2300億円だったということを勘案して1回当たり1兆3000億円程度と試算。約13・3兆円とされる日本郵政グループの純資産の約1割に相当する。西室社長も昨年10月の衆院予算委員会で「当初の放出株は10~15%」と答弁していた。発行済み株式総数の35%以上の流通を求めている東京証券取引所の上場基準には満たないことから「東京証券取引所と特例措置について調整する」とした。

金融2社の株式については、経営自由度の拡大、グループの一体性などを視野に入れてまずは段階的に50%程度になるまで売却するが、その後はグループ内の関係を見直した上で市場の動向や経済状況を見て決めるとし、完全民営化までの具体的なタイミングやスケジュールは示さなかった。

ゆうちょ銀行は住宅ローンや企業への融資などの新規業務の参入を金融庁に求めている。だが、新規業務へ参入するためには日本郵政の株保有率が50%超となっている間は国の認可が必要だが、50%以下になれば届け出制になると改正郵政民化法に明記され、届け出で済めば条件的に他の金融機関と同じになる。金融2社の収益力が落ちている中で、業務拡大によって収益アップを狙っているが、他の金融機関からは「50%以下であっても日本郵政が株を保有している限り、政府関与が残り、民業圧迫につながる」と警戒する声も出ている。

金融2社の株売却は当面50%

また、日本郵政グループの収益の9割を占める金融2社の売却が進み完全民営化すると、傘下のグループ3社のうち赤字に陥っている日本郵便だけが残り、収益状況は極端に悪くなることも予想される。日本郵政の影響力を残し、2社からの株配当収入によりグループの経営基盤を支える意味からも当面は売却を50%にとどめる狙いもある。

(3)の金融2社の株売却資金の使い道については日本郵政グループの企業価値、株式価値の維持・向上に活用していくとし、新規上場時の売却収入は日本郵政の自社株買いに充てることを想定しているという。これによって日本郵政株の株価の下落を防ぎ、経営基盤の強化を図っていく。

日本郵政株の売却に当たっては、昨年10月に主幹事証券会社として大和証券、野村証券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、SMBC日興証券、岡三証券、東海東京証券のほかゴールドマン・サックス証券など外資系証券会社も含め合計11社が決まった。通常は2~3社が担当するが11社というのは異例の多さ。金融2社の上場についても同じ11社が主幹事証券会社となる。

日本郵政株式上場・売却の準備が進む過程で同社は昨年2月にグループの中期経営計画を発表した。2万4000の郵便局ネットワークを生かし郵便、預金、保険の主要3事業の収益力と経営基盤強化やユニバーサルサービス維持などを柱に16年度までの3年間で1兆3000億円を投資し、16年度に純利益3500億円を目指すというものだ。

しかし、この計画では日本郵政株と金融2社の同時上場については触れていなかった。また、投資額の割に純利益額が少ないとの声もあった。同社はこの中期経営計画の見直しを進めており3月には公表する予定にしているが、どのように改定され、民営化を進める中で評価される成長戦略をどう描いて情報公開できるか大いに注目される。

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