目的のために合理的に動く「イスラーム国」。その宣誓布告の対処法とは

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol053 文化放送「くにまる・ジャパン」発言録より
ISILによって破壊されたシリアの町---〔PHOTO〕gettyimages

伊藤: フランス週刊新聞の襲撃事件、アメリカ国務省「犯行声明は本物」と断定。朝日新聞によりますと、フランスで起こった週刊新聞「シャルリーエブド」の本社襲撃事件をめぐり、イエメンを拠点とするイスラーム過激派「アラビア半島のアルカイダ」が出している犯行声明の動画について、アメリカ国務省は14日、「本物だと断定した」と発表しました。「アラビア半島のアルカイダ」が直接犯行に関わったのかどうかについては引き続き調査しているということです。

邦丸: リスナーのみなさん、佐藤さんがおっしゃっていたことが、奇しくも今回、不幸にも当たってしまったということがあるんです。

実を言うと、昨年の暮れに文化放送のメディアプラスホールで、いつも砂山圭大郎アナウンサーがお届けしている「オトナカレッジ」という番組のイベントがありまして、佐藤優さんに講演をしていただいたなかで、この「アラビア半島のアルカイダ」について、要するにイスラーム過激派の第一世代、第二世代、第三世代というのがあって、これを間違えちゃうと間違えたとらえ方をしてしまいますよという話をしてくださって、今回はまさにその第三世代による犯行なのではないか。あのとき、講演をお聴きになっていた方々は、「あっ」と思ったと思うんですが、あらためてラジオで、現在のイスラーム過激派の流れというものを教えていただけますか。

佐藤: いろいろな歴史的な流れがあるんですけれど、まず、いつからイスラーム過激派の流れが本格的に変わってきたのか。それははっきりしているんです。2011年9月11日。9.11、アメリカの同時多発テロ以降です。

あのときにテロを起こしたのは「アルカイダ」。あのときは、ウサマ・ビンラディンという親玉がいたんです。その副官のザワヒリもいた。そういった連中が指示を出して、ツインタワー(ワールドトレードセンタービル)への突入、ペンタゴン(アメリカ国防総省)への突入をやったわけです。実行犯からたどっていけば、誰が指令を出しているのかが必ずわかるわけです。アメリカはそれをたどって、皆殺し作戦をやった。それで本当に、皆殺しにしちゃったの。当時テロにかかわって、今、生きている人はいないです。これが第一世代のアルカイダ。

邦丸: うむ。

佐藤: この第一世代アルカイダのやり方を見ていて、これでは皆殺しにされてしまうということで、アルカイダの理論家が「グローバル・ジハード論」という革命理論を言うわけです。グローバルは地球な規模、ジハードというのは聖なる戦争ですね。

どういうことかというと、「アルカイダの第一世代のように組織をつくってしまうと、必ず捕まえられてしまうぞ。だから、イスラームの国家をつくりたいと思っている同志たちよ、組織化をするな。考えに共鳴したならば、あまりネットも見るな。横の連絡も取るな。3~4人の小さなグループをつくれ。そしてヨーロッパとかアメリカとかでは、爆弾の本を買うことは合法だ。

テロ活動についても心の中で思っていても罰せられないし、行動に賛成しても言論の自由の範囲になる。そういう社会の隙間を使って、あっちこっちで小規模のテロをやれ。それが積み重なると、イスラーム世界に関与しているからこういうことに巻き込まれるのだということで、ヨーロッパやアメリカが中東から退く。

あるいは、及び腰になる。そうすると、中東の独裁国家というのは、国を全部支配することができず、隙間ができてくる。その隙間に、グローバル・ジハードを起こすための新しい拠点をつくるのだ」──これが、「イスラーム国」なんですよ。

第二世代までのアルカイダは「イスラームはみな味方」という考えであるのに対し、第三世代は「スンニー派だけが本物で、イランのシーア派は偽物だから、シーア派を皆殺しにしろ」ということで、皆殺し作戦をやっているわけです。

邦丸: うーむ。

佐藤: それで、この第三世代のアルカイダがベースとなって、シリアとイラクに拠点をつくったんですね。そうしたら、第二世代のヨーロッパにいる連中のなかにイスラエル系の移民の子どももいるのと同時に、世の中には必ず過激派がいるんですよ。日本だってそうでしょ。かつて、ハイジャックをしたり、爆弾事件を起こしたりしましたね。こういう過激派というのが必ず、人口の0.0何パーセントかはいるんですよ。

そういう人たちがかつてはマルクス主義、共産主義に引き寄せられていたんだけれど、今は「イスラーム世界革命があれば一挙に世界が変わる」というものに引き寄せられていく。こういう第二世代の影響を受けた人たちと、イランに反対し、実際に拠点をつくり始めたイスラーム国の原型──イラクのアルカイダというグループです──がくっついて、第四世代の今の「イスラーム国」になっているという、進化を遂げているんです。

それをネットで見て、「オレも手伝おう。イスラーム国は嫌いだけれど、大きな方向は正しいから」ということで一緒にやっているのが、アラビア半島のアルカイダ。

邦丸: 今回フランスでテロを起こしたのも、集団ではないわけですよね。

・・・(略)