「文章力は、伝達力の基本」
【第17回】言葉が分かれば意図は伝わる!

〔PHOTO〕Thinkstock

【第16回】はこちらをご覧ください。

「分かりやすい論理」よりも「分かりやすい言葉」

分かりやすい表現をするためには、読み手に分かりやすい言葉を選んで、読み手に分かりやすい論理で書く必要があります。「言葉」も「論理」も、両方大事ですから、どちらにも気を使わなければいけません。

ただ、いきなり「言葉」と「論理」を同時に改善しようとしても、「二兎追うもの」になってしまう可能性がありますから、どちからか片方に集中して改善したいという方もいらっしゃるでしょう。

そういう方は、まずは「言葉」を改善できるように意識してください。わかりやすい言葉を選び、わかりやすい表現ができるように、注力した方が効果的です。

一般的には、「分かりやすい文章」「分かりやすい説明」にしようとすると、「論理」が重視されがちです。「論理的に書けば、伝えたいことが伝わる」と考えている方が多いのです。

ですが、「伝わりやすさ」の観点からすると、そうとも言えません。というのは、多少論理に飛躍や無理があったとしても、全ての言葉が分かれば、文章の意図は伝わるからです。反対に、いくら理路整然と書かれていても、文中の言葉が理解不能であれば、何を伝えたいのかが全く伝わりません。

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・「これから円安が進んで、物価が高くなりそうだなぁ」
・「嫌な仕事でもやらなきゃいけないんだから、がんばれよ」
・「いいから、売ってこい!」
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これら3つで「言いたいことが分からない文」はありますか? 「どうしてそう言えるのか分からない」ではなく、「一体何を言いたいのかさっぱりわからない」という文はないと思います。

では、これら3つのうちで「論理が完璧に分かる文」はいくつあるでしょうか?

「これから円安が進んで、物価が高くなりそうだなぁ」---この予想は、正しいと思います。ただし、かなり「行間」を省略していますので、なぜ円安になると、物価が高くなるのか、すんなり納得できない方もいると思います。

ぜんぶ丁寧に書くと、「円安が進むと、(輸入品の円換算の値段が上がる。日本では、食料品などを多く輸入に頼っているし、原油などのエネルギーも輸入に依存している。円安になると、それらの値段が上がるので、)物価が高くなりそうだなぁ」となります。

「嫌な仕事でもやらなきゃいけないんだから、がんばれよ」---これは、なんとなく納得してしまいます。しかし、よく考えると「なぜ嫌な仕事でもやらなきゃいけないのか?」は分かりません。この問いに対して、万人が納得できる答えを出せる人はほとんどいないでしょう。つまりこれは、論理はよくわからないが、意味は分かる、という文なのです。

「いいから、売ってこい!」---これは全く論理が分かりませんね。「いいから」と言われても、何が「いい」のか、なぜ売ってこなければいけないのか、論理的に解釈できる人は少ないと思います。ところが、「売ってくるように命じられている」「営業成績を上げなきゃいけないんだな」ということは伝わります。言われていることは分かるのです。

このように、論理が(多少)不完全であっても、伝えたいことはおおよそ伝わります。当然、大きく論理的に間違っていたり、飛躍していたりすると、読み手からツッコミを受けるでしょう。しかし、何が言いたいか全くわからないという事態にはならないはずです。

しかし一方で、言葉の意味が分からないと、全く理解不能になります。何のことが書いてあるのかがわからないようでは、論理が通っているのかどうかすら判断できないはずです。そして、その文章が意図しているメッセージ(連絡・分析・依頼など)も全く理解できなくなるのです。

「言葉」が分からないと、どういうことになるのか? 試しに次の文章を読んでみてください。

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最近のソフトウェアやプログラミング言語は、あらかじめモジュールを組み込めるようなインターフェースを用意しておき、ユーザが自由に追加機能を開発して公開したり、全体を入れ替えることなく機能を強化するのに利用しているものが多い。
(IT用語辞典より「モジュール」の説明)
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この文章は「論理的」です。でも内容が理解できません。使われている言葉が分からないからです。そのため、何が言いたいのかが全く分からないのです。これでは「外国語」を読んでいるのと一緒です。いくら論理が完璧で、かつ明快でも、そもそも理解できない言語で書かれていたら分かるはずがありません。

・論理に不備があっても、言葉が分かれば意図は伝わる。
・言葉が分からなければ、論理が完璧であっても伝わらない。

分かりやすく表現をするためには、「言葉」と「論理」が重要です。ですが、どちらをより重視すべきかといえば、「言葉」であるということを、ご理解いただきたいと思います。

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