【第75回】 ECBの量的緩和政策がユーロ圏経済にもたらす効果とは?
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ドラギECB総裁が明らかにした量的緩和政策の概要

1月22日、ECB(欧州中央銀行)は量的緩和(QE)政策を導入した。量的緩和政策の導入自体は、昨年末から予想されていたことだったが、その規模は事前の市場予想を上回るものであった。マリオ・ドラギECB総裁の記者会見後のマーケットでは、ユーロ安が進行、ここまではギリシャをのぞくユーロ加盟国の株高、長期金利低下が続いている。

1月27日時点でドイツの10年国債利回りは0.39%、フランスは0.59%と「中心国」の長期金利の低下が著しいが、それにとどまらず、かつて国債価格の暴落に見舞われたユーロ圏周辺国の長期金利もギリシャをのぞいて軒並み急低下している。たとえば、ポルトガルの10年物国債の利回りは2.20%、スペインは1.44%、イタリアは1.62%となっている。

ドラギ総裁が記者会見で明らかにしたECBの量的緩和政策の概要は以下の通りである。

[1]ECBの事実上の目標である2%のインフレ率が実現する展望が見えるまで毎月600億ユーロの公社債を購入する(とりあえずは2016年9月をその達成期限とする)

[2]この量的緩和政策は3月より実施する

[3]まずは、ユーロ加盟国の国債、及び政府機関債の購入をおこなう

[4]加盟国別の国債購入額は加盟国のECBに対する出資比率を基に決める

[5]購入した国債がデフォルトした場合、20%はECBが損失負担するが、残り80%は各国中央銀行が負担する

[6]「発行体」別(国債の場合は国なので、たとえばイタリア国債)の買い入れ限度は発行総額の33%、「銘柄」別(発行されたそれぞれの国債の銘柄)の買い入れ限度は発行総額の25%とする

[7]ギリシャ国債を「特別扱い」するつもりはない(つまり、オペの対象から外すことはない)が、現在、ECBが保有するギリシャ国債の償還(7、8月に予定)が順調におこなわれたことを確認した後にオペの対象とする

筆者は、今回のドラギ総裁の記者会見を「正しい」リフレ政策の表明として評価する。その理由は以下の通りである。

[1]ECBがデフレ回避に対して強くコミットした点がよく伝わったこと(メディアでは、「2016年9月に量的緩和が終了する予定」という形で報道されたが、前述のように正確な報道ではない。「2016年9月」の意味は、「2016年9月までの約1年半でECBは2%の最適インフレ率を達成する」というコミットメントを明確にしたのであって、インフレ率が目標値に到達しそうにない場合には、量的緩和の延期もありうるということが報道されていなかった点は残念であった)

[2]同時に、リフレ政策は、積極的な財政政策とのパッケージであることが必要だという点に言及したこと

[3]量的緩和は、「ポートフォリオ・バランス効果」に加え、人々の「予想(特に将来の経済成長についての確信(Confidence)」に働きかけることで効果を上げることが明言されたこと

[4]ユーロ圏経済のさらなる経済発展のためには「構造改革」が重要であるが、「構造改革」の役割までもを金融政策が担うことはできないと明言したこと

以上のようなドラギ総裁によるコメントは、きわめてオーソドックスな「リフレ政策」についての説明である。特に最近の研究では、デフレ回避には、民間投資の促進等、民間部門の将来に対する「センチメント」の改善が必要だが、そのためには、政策当局の「ドグマ(教条)」の転換がなによりも重要であるとされている(たとえば、ブラウン大学のGauti Eggertsson氏の一連のアメリカの大恐慌の研究がその代表例である)。

Eggertsson氏は、「ドグマ(教条)」の転換のためには、金融政策だけではなく、財政政策の転換も重要であるとしているが、今回のドラギ総裁の発言は、まさにこれに即したものである。

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