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ビジネスマン必読 スズキ元現地社長(松原邦久氏)は見た!中国で商売するなら、これだけは知っておけ
〔PHOTO〕gettyimages

ダマされたほうが悪い/謝ったら負け/誠意はいっさい通じない

自分は決して反中ではない。だがこれが真実なのです—。中国のビジネス界で戦ってきた、自動車業界の雄・スズキ元現地法人社長が明かす、驚くべき中国ビジネスマンのマインド。その実態とは。

平気でウソをつく

日本を代表する自動車メーカーの一つ、スズキ。松原邦久氏(71歳)は、'95年から、その中国部部長などを歴任し、'01年からは現地法人である重慶長安鈴木汽車の社長を務めるなど、30年以上にわたって中国ビジネスの世界に携わってきた。近著『チャイナハラスメント』(新潮新書)でその実態を明かした松原氏に、いまだから語れる中国ビジネスの裏側と、中国と向き合う日本人ビジネスマンへのアドバイスを聞いた。

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どこのメーカーも、自分たちが儲かっていない、などという話を声高にはしません。しかし、中国で責任者を務める日本人ビジネスマンとゴルフなどの場で話をすると、芳しい結果を出していないところがほとんどだとわかります。

儲からない理由は様々です。中国でのビジネスノウハウが不足していることもあれば、人件費が安いから儲かるに違いないと安易な気持ちでやってきたけれども、現実は厳しかったという場合もあります。

けれども、中国に進出した日本企業が苦戦を強いられる最大の要因は、日本企業に対する不当な虐め、いわゆる「チャイナハラスメント」なのです。これが続く限り、日本の企業はむしり取られるばかりで、何のメリットも得られません。

私は決して反中ではなく、中国で長年ビジネスに携わり、友人もたくさんいます。充実したビジネスマン人生を送れて感謝さえしている。

それでも、そうした個人的な思いとビジネスは別問題です。日本人はとかく忘れがちですが、ビジネスではまず自分の利益を確保しなければならない。これから日本が生き残るためには中国ビジネスの現実を知っておく必要があるのです。

■ダマされたほうが悪い

現地に進出した日本企業のビジネスマンがまず戸惑うのは、日本人と中国人では価値観や意識があまりにも違うということです。

例えば、中国人の多くが共通して持っている、

「人をダマしても、自分の利益になればかまわない」

という発想。これなどは我々日本人には到底理解できないでしょう。

私が出会った中国人ビジネスマンの代表的な例を挙げてみましょう。

'93年に、スズキは軍需産業から自動車産業に進出したC集団公司(仮名)と合弁契約を結びました。

私が中国部長を務めていた'98年、C集団公司の「総経理」(社長)となった人物がいました。かりにその名を「王」とします。

王はその後、'05年にはC集団公司の董事長(会長)まで昇り詰め、名誉ある「中国優秀経営者」の候補者となります。そして中国のエリートが集まる清華大学で学生たちを前に、自分の業績について講演しました。そこで彼は、得々とこんな話をしたのです。

「我々のような防衛産業には、海外企業はなかなか技術を売らない。学ぼうとしても学べない。盗もうとしても盗めない。だから自分で研鑽するしかない」

「スズキの会長は我々が日本に勉強に来ること、交流することを希望していた。だが我々は自分で発展したいので、『一つの企業に頼っていてはいけない』と思っていた。それで私は米国のフォードと接触したのだ」

「スズキがC集団公司の株式を買うとき、我々は『新たに自動車関連の事業を始めるときには、事前にスズキの承認を得る』という約束をした。だが私はフォードと接触した際、同意を得なかった。この問題の交渉は紛糾し、初日は20時半、翌日も14時まで交渉したが、日本側は我々に食事も出さなかった。『日本人はみんなケチだ。食事も出してくれない』と私は言った」

約束違反を自慢するのにも驚きますが、王はこの出来事の解決交渉には直接参加もしておらず、夜まで交渉したとか食事も出されなかったというのは完全な作り話です。'02年、スズキは損のない金額でC集団公司の株式を手放しました。

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