防衛・安全保障
「イスラム国」人質事件における安倍官邸の「危機管理能力」を評価する

2014年1月に来日したトルコのエルドアン大統領と安倍首相 photo Getty Images

安倍官邸は今、過激派組織「イスラム国」とみられるグループが日本人2人の殺害を予告している事件に全神経を集中させている。事態は時々刻々と変化。24日深夜には、後藤健二さん(47)が湯川遥菜さん(42)の遺体とみられる写真を持たされる新たな映像が、インターネット上の動画投稿サイトで突然、公開された。実に謎が多い「難敵」との戦いを強いられている安倍官邸の取り組みを記しておきたい。

アルジェリア事件の経験生かす

安倍官邸が海外で発生した人質事件に直面するのは2度目だ。前回は政権発足から22日目の2013年1月16日午後2時ごろ(日本時間)、アルジェリア・イナメナスの天然ガス関連施設でプラント建設大手「日揮」の邦人社員らの拘束事件が発生した。

官房長官・菅義偉をはじめ、官房副長官も首相、官房長官の秘書官らも、2年前とまったく同じスタッフで対応に当たっている。この当時の経験がそれぞれに蓄積されていることがかなり役立っている。あるスタッフはこう語る。

「アルジェの事件の経験が生きている。あの時は、菅官房長官に夜中も1時間おきに情報を入れ、菅さんは睡眠不足に陥っていた。今回はそういう無駄な動きをしなくなっているだけでも大きい」

「アルジェの事件や菅政権時代に起こった東日本大震災の時に比べたら、はるかに冷静に対応している」

危機管理において、まずリーダーやその周辺が浮き足立たず、冷静沈着に対応することが必須条件だ。その上で、できる限り情報を集め、真偽を見極める。そして、情報をしっかりと管理し、情報漏えいによって交渉が困難にならないようにする一方、国民が不満を持たないように一定の情報は提供していくという、極めて難しい作業を強いられる。

情報収集面において、安倍官邸はアルジェ事件の時に比べ、かなり充実している。あるスタッフも「情報はどっさりある」と言う。これは、「安倍外交」の成果と言える。

安倍は13年の5月と10月に、「イスラム国」との交渉でカギを握るトルコを訪問。14年1月にはエルドアン大統領が来日している。来日の際に両首脳は、日本とフランスの企業連合が受注で実質合意しているトルコへの原発建設を着実に進めることで一致。経済連携協定(EPA)交渉の開始で合意した。

ヨルダンとの関係では、アブドラ国王が昨年11月に来日し、今年1月に安倍が中東歴訪の際にヨルダンを訪問した。アブドラ国王との会談で、安倍はシリア内戦やイスラム国の影響でヨルダンに逃れた難民、避難民対策のため120億円の円借款供与を約束した。このほかオバマ米大統領、アボット豪首相、キャメロン英首相と電話で協議している。

2年余りかけて培った各国首脳との関係が情報収集面で生きている。この情報が安倍や菅に届く前に、政府の国家安全保障局局長の谷内正太郎がある程度、精査している。外交・安全保障政策の司令塔と位置付けられる国家安全保障会議(日本版NSC)はアルジェ事件の反省もあって昨年1月に設置された。

「外務省と防衛省はお互いにけん制し合っているところがあるが、谷内さんの下で統括されている」(官邸スタッフ)

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