Facebook CEOのマーク・ザッカーバーグ氏に学ぶ読書体験の可視化---「ブッククラブ2.0」の可能性
〔PHOTO〕gettyimages

Facebook CEOのマーク・ザッカーバーグ氏が年初に立てた新年の抱負は「今年1年間、2週間ごとに1冊、異なる文化、信念、歴史、テクノロジーを学ぶことに主眼を置いた新しい本を読む」というものでした。

今年もすでに1月の終わりを迎え、多くの人が新年の抱負に挫折しかけているだろう今、Facebookで約3100万人にフォローされている、世界最大の13.5億人が参加するソーシャル・ネットワーキング・サービスのCEOはすでに1冊目を読み終え、2冊目に取り掛かっています。想像どおり、多くの人に本を読むきっかけを提供するという点で大きなインパクトを与えているようです。

彼が1冊目に選んだ『The End of Power』(2013年3月出版)は、1月2日のザッカーバーグ氏によるFacebook上での投稿の直後にアマゾンの書籍ランキングで当時の45140位から一気にトップ10に急上昇し、合計約13000冊以上の販売をもたらしたと報じられています。また新年の抱負にあわせて作成されたFacebookページ上のブッククラブ『A Year of Book(イヤー・オブ・ブック)』には現在約28万人が参加しています。

『The End of Power』(権力の終わり: 未邦訳)は、元ベネズエラ貿易産業相でフォーリン・ポリシー誌の編集長経験もあるMoiss Nam(モイセス・ナイーム)氏による著作で、ローマ法王、各国大統領、大企業CEOなどが有していた従来の伝統的な権力が、物質的な豊かさ、モビリティ(人やモノの移動)、中流化などの時代の変化により、より小規模の組織、個人へと移りつつあるトレンドを分析した著作です。

そもそもファイナンシャル・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙が選ぶ2013年の推薦図書に含まれ、多くの大企業CEOや学者が推薦していましたが、300ページ以上にも渡る書籍で、一般読者には正直そこまで認知されている本ではありませんでした。

ただ、アラブの春、イスラム国の台頭、スタートアップ企業の躍進、女性の活躍など、最近の大きなトレンドを理解するという点で重要な示唆が得られることでしょう。加えて、Facebookが現在享受しているインターネット業界の絶対的な権力がどのように新興スタートアップの脅威を迎え撃つか、という文脈もあわせながら読むことで、多くの示唆が得られそうな内容です。こうして多くの人がザッカーバーグ氏の思考を学びたいと思ったことで、世界的な一大センセーションとして書籍が購入されたことと思います。

アマゾンでの同書のページを開くと、一番初めの目立つ箇所に「マーク・ザッカーバーグ氏による『イヤー・オブ・ブック』の記念すべき1冊目に選ばれた同書は・・・」とすでに推薦の言葉が含まれています。また、すぐに売り切れてしまったプリント版は出版社が大急ぎでザッカーバーグ氏に選ばれた旨を表記した表紙に作り変え、販売を促進しているとのことです。

ちなみに2冊目に選ばれた書籍『The Better Angels of Our Nature』は、ハーバード大学で認知科学・認知言語学・進化心理学の教授を務めるスティーブン・ピンカー(Steen Pinker)氏による著作(2011年10月出版)です。聖書の時代から現在まで暴力が減少してきており、テロリズムなどの問題もあるものの、現在は人類史上もっとも平和な時代を我々は生きている、という内容で、800ページ以上もの骨太の作品です。

今後11ヵ月の間、2週間ごとにこうした影響力を持つザッカーバーグ氏からの推薦がいずれかの書籍に与えられるということで、出版社側も注意してザッカーバーグ氏やイヤー・オブ・ブックのFacebookページを注視することと思います。

ザッカーバーグ氏によるブッククラブの現在の課題

1月13日には『The End of Power』の著者も積極的に参加するFacebook上のQ&Aチャットが開催され、セッション直後には約130もの質問、約250のコメントが寄せられたとワシントン・ポスト紙でも報じています*。

ただ、あれだけスタート時に注目を浴びたブッククラブの試みも、このQAセッションに寄せられたコメントの数や質を見る限り、残念な結果でしかなく、セレブリティとして早くからブッククラブの試みをおこなっていたトークショー・ホストのオプラ・ウィンフリー氏のものにはまだまだ及ばない、ともワシントン・ポスト氏は辛口の指摘をしています。

ウィンフリー氏が始めた人気テレビ番組とも連動していたブッククラブは、主に小説を取り扱い、彼女が推薦することで多い時には数百万冊の売上をもたらしたと言われています。2011年のテレビ番組の終了に併せて当時の形態でのブッククラブは終了してしまったものの、15年の間に「オプラ推奨版」として紹介された書籍70冊は推定で合計5500万冊を売り上げたと言われています*。

多くの人が読書体験を共有する場所として、Facebookページの投稿の仕組み、表示・通知のしくみ(アルゴリズム)が最適なものでない、とワシントン・ポストは指摘しています。たしかにFacebookの現在の仕組みではページに「いいね」をしても新しい投稿に気づきにくい、コメントが書き込まれても数百件も寄せられることでどのコメントを読むべきか分かりにくい、コメントに自分のアイデアを書き込みにくいなど、改善点が多くあります。

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