海外経験がなくてもオックスブリッジに入学できる! 「大学院博士課程」に進むために必要なこと
「日本人、オックスブリッジに挑む」博士編

シリーズ「日本人、オックスブリッジに挑む」では、学部・修士・MBA・博士・英語対策、という5本構成で、オックスブリッジの受験対策を紹介します。今回はその第3弾、博士編です。

スイスサンガレン国際シンポジウムにて、筆者
緒方健
福岡生まれ。2006年東京大学工学部卒、2008年日本学術振興会特別研究員(DC1)、同大学院博士課程中退。2012年ケンブリッジ大工学部電子電気工学科で博士号取得。その後、同大にてリサーチフェローとして次世代蓄電池研究をリードすると共にロンドンのバイオベンチャーOrphidia Ltd.に創業メンバー兼Vice Presidentとして参画。2012年スイスSt.Gallen SymposiumにてLeader of Tomorrowに選出。現在、外資系メーカーにて次世代蓄電研究に従事。ケンブリッジ在学中、グローバル人材と地方高校を繋ぐ非営利団体Connect the Dots Japanを日本人留学生と共に設立し現在その運営も行う。

実は身近なオックスブリッジ博士課程入学?

ニュートン、ダーウィン、スティーヴン・ホーキング、ケインズ、アダムスミス、マーガレットサッチャー、トニーブレア、白洲次郎、黒田東彦……すべてオックスブリッジの卒業生である。これを聞いて「オックスブリッジの大学院、ましてや博士課程入学など自分や自分の子供には関係のない話ではないか?」と思っている方は是非今回の記事を読んでいただきたい。

オックスブリッジの「博士課程」入学は「学部」入学とはその選考方法が大きく異なる。前者に関しては、筆者のように海外経験などなく普通に日本で小学校から大学まで教育を受けてきた人間に対しても実は多くのチャンスがある。しかし、そういった事実は意外と日本では知られていない。今回の記事では、そのようないわゆる帰国子女ではない日本人がオックスブリッジ「大学院博士課程」に入学するためには何が必要なのか、何が本質的な障壁となってくるのかをできるだけ具体的に伝えたい。

しかしながら、その「ノウハウ」を一括りに述べるのは極めて難しい。何故なら、そもそもオックスフォードとケンブリッジは入学システムが全く同じというわけではないし、Scienceかnon-Scienceか、予算のある研究室か否か、しいては教授のキャラクターや研究哲学といった色々な要素で入学の基準が異なってくるからである(それがオックスブリッジ大学院入学プロセスを不透明にしている一つの要因でもあると考えている)。

筆者は日本で一般的な大学・大学院受験ルートを通り、修士まで修了した後にケンブリッジ大学大学院の工学部電子工学科に入学し、2012年に博士号を取得した。そこで今回は自身の経験に加え、オックスブリッジ在校生・卒業生十数名への聞き取りをもとに、オックスブリッジ博士課程入学ノウハウの「共通項」を出来るだけ抽出したいと考えている。故に、個別の例外ケースが散在する点はご容赦いただきたく、あくまで具体的なステップを踏む参考材料として活用していただければ幸いである。

「博士課程」に対する固定観念の切り替え

ノウハウを述べる前に、まずオックスブリッジの「博士」なるものの意味が、日本での一般的な「博士」とは少し異なっている点に触れさせていただきたい。日本で「博士号」を持っている人というと、研究所で白衣を着て昼夜地道に実験に励む「何かよくわからいけど難しいことをやっているお勉強のできる人」や、古典文献で敷き詰められた部屋でしきりに論文執筆に励む「オタク色の強い研究者」などのイメージが強い。そして現実も良い意味で大人しい人が比較的多い気がする(日本の場合、「元気」のある人は学部・修士で就職する場合が多い)。

しかし、オックスブリッジの博士号取得者の性格はずいぶん異なる。電子工学科であった私の同僚たちはとにかく元気と勢いと情熱だけはある人間が多かった。彼らはその後「国会議員(MP: Member of Parliament)」「ヘッジファンドマネージャー」「専門/戦略コンサルタント」「起業家」「投資銀行家」「ジャーナリスト」など様々な道へ進み、純粋な研究者になった者は半分程度であった。いわゆる研究者タイプから起業家精神に燃えるギラギラしたタイプまで様々なキャラクターがいた。そのような意味では、オックスブリッジで博士号を取得することは「研究者になるための必要条件」に限らず、その後の人生でプロフェッショナルとして生きていくための「自信」、「行動・思考の品質保証」といった意味に近いのかもしれない。

また、オックスブリッジの博士課程はこれまでの連載で述べてきたようなカレッジシステムを中心とした極めて学際的で活動的な人的交流の中で行われ、世界中に一生の仲間を作ることができる。皆、博士号取得後は何をやっても自由だし、自分は何をやっても世界で通用する、という(若干「bluffing=はったり」的な)自信に満ちている。高いレベルの博士号ホルダーが研究領域に直結しない分野に行くことが当たり前で、それが社会の受け皿を作り、さらにそれが博士課程学生の質との正の連鎖を形成している(そのため日本の「ポスドク問題」のような事態が社会問題化するということは比較的少ないように感じる)。

砕いていうと日本の博士課程は「I型人材」を創り彼ら彼女らが主に研究職へ就くのに対し、オックスブリッジでは博士号を取得後「横棒の長いT型人材(どこにいっても食いっぱぐれないタイプ)」が社会全体に浸透する。この様な点でオックスブリッジと日本の「博士号」の意味は異なる。