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本物の恐怖に我々は耐えられるか これから始まる イスラム国「血の復讐」とその能力
〔PHOTO〕gettyimages

どこか遠くで起きた恐ろしい出来事だから自分には関係ない。そう思っていないだろうか。だがフランスを襲ったテロの恐怖は世界に広がっている。拡大する不気味な集団「イスラム国」とは。

米国も手を焼く未知の恐怖

「フランスでの新聞社テロだの、中東やアフリカでのイスラム過激派との闘いと聞いても、大多数の日本国民は自分には関係のない、遠い国の話だと思っている。

しかしはっきり言って、もはや私たち自身の命も危機に瀕している。明日は自分が突然、見知らぬ人に殺されるかもしれない—。そんな時代状況にあるのだという危機感くらいは、日本国民も世界と共有すべきだと私は思います」

ある警視庁の公安関係者は、こう語った。

1月7日、新年早々の世間を驚かせたフランス・パリの新聞社シャルリ・エブド襲撃事件。覆面の男2人が自動小銃や小型ロケット弾などで武装して社内に押し入り、受付で1人を射殺。さらに社長や編集者が一堂に会した編集会議に乱入し銃を乱射。社長や風刺漫画家を含む10人が死亡した。

また、犯人は駆けつけた警察官らにも銃弾を浴びせ、道路に倒れた警察官にわざわざ近づいてとどめをさして殺害。近くに停めてあった車で逃走した。

残虐な事件を引き起こしたのは、34歳と32歳のクワシ兄弟。イスラム教を信仰するアルジェリア系移民だが、フランスで生まれ育った若者たちだった。

事件はさらに連鎖し、翌8日には、別の犯人が女性警察官2人を銃撃。9日にはユダヤ系住民が集まる食料品店を襲撃して4人を殺害し、特殊部隊との銃撃戦の末、死亡した。この事件を引き起こしたクリバリ容疑者も32歳と若い。

彼らがこのような事件を起こした背景には、いま中東シリアやイラクを拠点に勢力を急拡大している自称「国家」のイスラム過激派組織、「イスラム国」の動きがあるとされる。

12日には、フランスの事件に呼応するように、イスラム国への空爆を主導する米中央軍のツイッターがイスラム国支持者を名乗るハッカーに乗っ取られた。

「サイバー・カリフ国」(「カリフ」はイスラム国の最高指導者の意味)と名乗るこのハッカーは、そのツイッターを使って米軍高官の連絡先など個人情報を暴露。〈お前たちの妻子のこともすべて知っている〉、〈米兵よ、我々は迫っている、背後に注意しろ〉などという文言が書き込まれた。

残虐な銃撃事件を引き起こす一方、ネットを使ったサイバーテロまでやってのけるイスラム国とそのシンパたち。血なまぐささとスマートさをあわせもつ、これまでにない脅威を前に、米国を初めとする欧米諸国もどう相対してよいかわからず、手をこまねいている。

そしていま、そのイスラム国の影響が「遠からず日本の若者にまで及ぶ可能性がある」と危惧する声まで、日本の専門家の間でもあがり始めているのだ。

そもそも、自ら「国家」を名乗るイスラム過激派「イスラム国」とはどのような組織なのか。

イラクとシリアにまたがる広大な地域を支配するその組織の特徴として、まず挙げられるのは、過剰なまでの残虐性だろう。

イスラム国は、'14年8月、拘束していた米国人ジャーナリストのジェームズ・フォーリー氏の首を斬り落とす一部始終を撮影し、インターネットで配信。世界に衝撃を与えた。

米国の囚人服を模したオレンジ色の服を着せられたフォーリー記者は、〈これは米国の独善と犯罪行為の結果だ〉、〈家族に会いたかった〉などとする文章を読み上げさせられたのち、ナイフで首を落とされた。

この一件だけならば、これまでもイスラム過激派が行ってきた見せしめ的な外国人処刑の一例に過ぎないと思われただろう。

だが、イスラム国は11月までのたった3ヵ月間に米国人3人、英国人2人が同様の手口で殺害していった。

さらに、捕虜のシリア軍の兵士10人以上が並べられ、いっせいに首を落とされていく処刑シーンを撮影した動画(上の写真)が配信されるに至って、世界の専門家らも、この集団がかつてないほど苛烈で、不気味な集団だと認識するようになったのだった。

日本でも、残虐動画が飛び交う最中の同年10月に北海道大学の学生(26歳)がイスラム国に渡航、戦闘に参加しようとしたとして警視庁公安部の事情聴取を受け、イスラム国の名はさらに強く印象付けられた。

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