オックスブリッジの道へと進む第一歩---学術修士課程への出願方法
「日本人、オックスブリッジに挑む」修士編

シリーズ「日本人、オックスブリッジに挑む」では、学部・修士・MBA・博士・英語対策、という5本構成で、オックスブリッジの受験対策を紹介します。今回はその第2弾、学術修士編です。

卒業式の日にサマーヴィル・カレッジのホール前にて
丸﨑玲(まるさき・あきら)
オックスフォード大学 国際開発学部(Queen Elizabeth House) 難民・強制移住研究修士課程(MSc in Refugee and Forced Migration Studies) 卒業
開成中学・同高校・東京大学教養学部国際関係論学科卒業。東京大学在学中、パリ政治学院(Sciences Po)交換留学。2008年防衛省入省。2012年から2年間英国留学。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)国際関係論修士課程(MSc International Relations)卒業後、オックスフォード大学(サマーヴィル・カレッジ)へ。現在は、防衛省防衛政策局調査課戦略情報分析室にて、安全保障政策に係るインテリジェンス関連業務に従事。

私は防衛省より2012年から2年間の留学の機会をいただき、まずはロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で「国際関係論」を専攻、同校卒業後、オックスフォード大学にて「難民・強制移住研究」を専攻した(なぜ防衛官僚の私が難民・強制移住研究を専攻したかについては後述する)。チャレンジングかつディマンディング、そして世界各国の多くの友人に恵まれた英国留学を終えてから、既に早半年が経過しようとしている。帰国後、私自身初のインテリジェンス部門での勤務、我が国の安全保障にとって極めて重要な分析担当とあって、まさに身の引き締まるような毎日である。各種情報の分析、幹部・政治家等への説明、各種関係者との議論等、膨大な情報を常にインプット・アウトプットしながら、我が国の安全保障をより良い方向に定めるべく日々奔走している。

難民・強制移住研究を学んだ後にインテリジェンス、と聞いて不思議に思う方も多いかもしれないが、オックスブリッジで身につけた「思考の作法」は、年々複雑化する安全保障を担う防衛省において非常に強力な武器となる。尊敬する上司が、「安全保障を理解するために防衛関係の情報分析を行うことはもちろんだが、経済・社会制度等、様々な観点から理解するよう努めることが大切だ。」とおっしゃったことがある。安全保障に携わる者として、様々な視点を持ち、物事を多面的に理解出来る頭の柔軟性を持つことは極めて重要で、私自身常にそうあるよう努めている。

「オックスブリッジの流儀」の一つとも言える「学際性(interdisciplinarity)」が、私のものの考え方に大きな影響を及ぼしたことは疑いのない事実だ。今回オックスブリッジ学術修士課程への出願に関する記事の執筆を引き受けたのは、日本、そして世界をより良いものにすべく、これまで以上に多くの方々に実際に「オックスブリッジの流儀」を身につけてほしい、との強い想いからである。

一言でオックスブリッジの学術修士課程への出願と言っても、オックスフォード大学とケンブリッジ大学ではその要件・方法は多少異なっている。また同大学内であっても、多かれ少なかれ全てのコースにおいて出願方法に何らかの特色がある(例えば、経済系のコースであればGREが必要等)。それ故、出願について万人が参考にすることの出来る記事を書くというのはなかなか難しい。しかし、それぞれのコースで全く違うかと言われればそうでもなく、調べてみると理系と文系の学部や、Master of Science(MSc)とMaster of Philosophy(MPhil)においても共通要素は多い。それ故、オックスブリッジに挑んだ一日本人の体験談というのも、あながち無価値なものでもあるまい。

そこで、以下、私の実体験を元に、(1)出願に必要な提出物等、そしてそれを踏まえたコース開始約2年半前からの(2)出願スケジュール、の二点に絞って書きたいと思う。

(1) 出願に必要な提出物等

オックスブリッジの学術修士課程の受験においては、一般的に大学主催の筆記試験や面接はなく、①英語力、②大学での成績、③志望動機書 / 研究計画書、④履歴書、⑤推薦状、⑥アカデミック・サンプル、といった複数の観点から総合的に判断される。前述の通り、オックスフォード大学とケンブリッジ大学、また各種コースにおいて、基準や評価方法は異なる部分もあると思うが、以下、私の出願したコースの提出物を中心に記述する。

①英語力(IELTS / TOEFL等)

オックスブリッジが求める英語力は高い。例えば、私のコースにおける基準は、IELTSで7.5以上(各項目で7.0以上)もしくはTOEFLで110以上(Listeningで22以上、Reading・Writingで24以上、Speakingで25以上)であった。オックスブリッジの他のコースでも、これとほぼ同じレベルのスコアが要求される。

ただし、オックスフォード大学には「英語試験免除(English Test Waiver)」という制度があり、有名な大学等(recognised institution)において9ヵ月以上全て英語で行われるフルタイムのコースを修了している出願者は、IELTSやTOEFL等の成績提出を免除してもらうことが可能な場合がある。すなわち、それなりに名の知れた(とオックスフォード大学が判断する)英語圏の大学等への中・長期留学経験があれば、英語力の要件は簡単にクリアすることが出来るかもしれないのである。ちなみに、ケンブリッジ大学にも同様の制度はあるが、期間の要件が厳しく、3年以上のコースを修了していることが必要になる。

自習でよく利用したオールソウルズ・カレッジの図書館