現代新書
ダボス会議にようこそ 第1回 日本人の知らない「ザ・国際会議」の正体

「ダボス会議」という名前を聞いたことのある人は多いだろう。しかし実際に何が話し合われているのか? 話し合うことにどんな意味があるのか? 日本への影響とは? それらに答えられる人はそれほど多くないかもしれない。

今回からはじまる連載では、ダボス会議とそれを主宰する世界経済フォーラムに近年深く関わる筆者が、ダボス会議について解き明かす。

ダボス会議とは何か?

齋藤ウィリアム浩幸氏は、現在「ベンチャー支援コンサルタント」として活躍し、日本の企業や政府をサポートする立場で、ダボス会議についてさまざまな情報発信をしている

「ダボス会議は誰が何のために開いているのでしょうか?」

経済や世界情勢に関心のあるビジネスパーソンならば、この問いに簡単に答えられるかもしれません。しかし、その歴史や仕組み、実際に議論されている内容やその影響力を知る人はどのくらいいるでしょう。「世界中の政治家や経済人が集まって行う会議だとは知っているけど、中身はよくわからない」という人が多いのではないでしょうか?

「ダボス会議」で知られる「世界経済フォーラム(World Economic Forum)」について、私、齋藤ウィリアム浩幸がお話しいたします。

まずは、私の簡単な自己紹介を含め、私と世界経済フォーラムの関わりを説明します。

私は、1971年カリフォルニア生まれの日系二世です。2004年まではアメリカで暮らし、その間にI/Oソフトウェアという会社をつくり、指紋認証など生体認証暗号システムの開発をしてきました。会社を2004年にマイクロソフト社に売却した後、拠点を日本に移し、ベンチャー支援の会社を起ち上げました。

世界経済フォーラムとの関わりは2011年から。同年にフォーラムから「ヤング・グローバル・リーダーズ(YGL)」、および「グローバル・アジェンダ・カウンシル(GAC)」のメンバーとして選出されました。その後ボードメンバーにも任命され、ダボス会議はじめ世界経済フォーラムのさまざまなことに関わらせていただいています。

アメリカで育った「ベンチャー支援コンサルタント」として、また、日本の企業や政府をサポートする立場で、ダボス会議について知るさまざまな事柄を書かせていただければと思います。

私が2011年に選出された「ヤング・グローバル・リーダーズ(YGL)」は、世界経済フォーラムによって世界中の40歳以下の中から毎年150人くらいの人が選ばれます。現在約900人、任期は6年。任期中に一度はダボス会議に行けることになっています。メンバーになると、無料でハーバード、イェール、オックスフォード大学などで講義を受けることができます。ちなみに日本には約50人のYGLがいます。

YGLにはどうすれば選ばれるのか? じつは誰の推薦によって選ばれるかは明らかにされていません。

推薦後、外部機関の二次審査を経て選出されるのですが、選出された人間には、ある日突然、「おめでとうございます。あなたがYGLに選ばれました」という英文メールが届きます。日本人の場合、選ばれた人の中には、ジャンクメールだと思って消してしまう人もいるくらいで、世界経済フォーラム事務局は連絡がつかずに苦労したという話も聞いたことがあります(笑)メールの2週間後くらいに確認の電話がかかってきて、やっと本人が信じるというパターンです。

まだまだ知名度の低い日本ではそんな感じですが、他の国々では、YGLに選ばれるということは、新聞の一面記事になるニュースです。

たとえば「ウォール・ストリート・ジャーナル」や「チャイナタイムズ」ではフロントページを飾ります。また、シンガポール、マレーシア、フランスでも、ビッグニュースになります。名刺に「YGL」と書くのはひとつのステータスになっています。

それではそんなことをしている「世界経済フォーラム」とはどんな組織でしょうか。1971年(私が生まれた年です)、ドイツ生まれの経済学者、ジュネーヴ大学のクラウス・シュワブ氏によって設立されました。いまや世界中の要人が集まる国際会議を主宰する組織が、たったひとりの学者のアイデアから始まったというのは、驚くべきことです。シュワブ氏の博士論文のテーマはもともと「マルチ・ステークホルダー」でした。当時シュワブ氏は33歳の若手学者。その彼が各国大統領、首相をはじめ、いろいろなバックグラウンドを持つ政治家、経営者や宗教家、大学教授、文化人を集めて議論しようと呼びかけたのです。

その目的は、ビジネス、政治、アカデミアなどの社会におけるリーダーたちが連携することで世界・地域・産業の課題を形成し、世界情勢の改善に取り組むことです。本部はスイスのジュネーヴにあります。年次総会がスイスのダボスで行われることから「ダボス会議」と呼ばれています。

ダボス会議は、世界中から約2500人の選ばれた知識人やジャーナリスト、企業経営者や政治指導者が集まり、世界が直面するさまざまな問題について議論する場です。

ダボスという町はとても小さいので、人数には物理的制約があり、出席者約2500人を、約7500人の警備・兵隊が守っています。世界中の要人が集まるので、警備は厳重です。50メートル置きに警官が立ち、ビルの上ではスナイパーが控えています。

「世界経済フォーラム」はいまではダボス会議の主宰者として知られる組織ですが、そのほかに、世界中の課題について専門家が討議する「グローバル・アジェンダ・カウンシル(GAC)」、そしてGACが中心になって発表するじつに多くのレポート(研究報告書)の発表でも知られています。これらのレポートをもとに各国の施策が決められることもよくあることです。ちなみに日本では、男女の格差を指数化して順位をつけた「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート(世界男女格差報告書)」における国別ランキングがあまりに低い(142ヵ国中104位!)ということがよくニュースになるのでご存じの方も多いと思います。

ダボス会議は毎年1月下旬に開催されます。今年は1月21日から24日まで。じつはダボス会議で毎回一番盛り上がるのが木曜日の夜の「ジャパンナイト」。日本政府が開くイベントで、各国政府や企業の人々を歓待するのですが、日本から板前さんが来て寿司を握るので大人気です。これまで、俳優の渡辺謙さんやMISIAさん、書道家の紫舟さんがゲストで参加しました。私は2013年、2014年と司会を担当していますが、開会のとき、「Welcome to Sushi night」と言うのが決まりごとのようになっています。

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