第109回 大塚明彦(その三)400億を投じた「複製美術館」---1000点の名画を陶板に再現した

来る1月21日と26日、昨年11月28日、77歳で他界した、大塚明彦のお別れの会が東京と徳島で行われる。

徳島の会場は、大塚国際美術館。
この美術館こそが、四百億円もの巨費を投じた、大塚グループの一大事業であり、同時に企業をあげての蕩尽といえるのではないだろうか。

数年前、旅行で高知を訪れたときのこと。知人のホテルオーナーに、「面白いところがあるから、是非行ってみてください」と、大塚国際美術館を薦められた。
高知から鳴門海峡近くの国立公園内にある美術館までレンタカーを運転して行ってみた。

地上3階、地下5階という巨大ビルの見上げるようなエスカレーターを上り、エントランスに足を踏み入れると、目の前に青い礼拝堂が現れた。
壁面に描かれている聖母マリアとキリストの絵には見覚えがあった。
イタリア中世の画家、ジョットによるものに間違いない。
しかし、近くに寄ってよく見ると、それは単なる模写ではなく、陶板に焼き付けられた絵画なのであった。

ここ大塚国際美術館は、1000点にも及ぶ世界の名画を、全て陶板に、しかも原寸大で描いた作品を展示しているのだ。
古くは古代ポンペイの壁画から、ロマネスク絵画、バロックのレンブラント、ゴヤ、近代のルノワール、ゴッホ、現代のクレー、ピカソまで。順路通りに鑑賞すると、四キロメートルにも及ぶという。

さらに驚くのは、エントランスの礼拝堂をはじめ、絵画作品だけでなく、内部の空間そのものを立体的に再現した、12点もの環境展示があることだ。

大塚国際美術館は「大塚グループ創立七十五周年記念事業」として、平成10年3月21日にオープンした。
しかし、その構想は25年も前から動き始めていたのである。

昭和48年、大塚オーミ陶業株式会社が創立した。
徳島には吉野川があり、その吐きだし河口には、永年の川砂が沈積し、「海砂」となっていた。
コンクリートの原料となる海砂は戦後、鉄筋コンクリート建築がさかんになると、需要が高まった。

明彦の父、正士はこれに目をつけたが、海砂は有限のため、新規採取は認められなかった。そこで、海砂でタイル(陶板)を作って売ることを考えたのである。