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SmartNews鈴木健【第3回】「300年かけて、新しい民主主義と情報の流通システムを構築したい」
佐々木俊尚氏と鈴木健氏
これからのメディアについて、ジャーナリスト佐々木俊尚氏が切り込んでいく本連載4人目のゲストは、スマートニュース社共同CEOの鈴木健氏。同社が開発・運営するニュースアプリSmartNewsは2014年10月に米国版がリリースされ、全世界で高い評価を得ている。ニュースアプリの先頭を走り続けるSmartNewsは、何を目指しているのか---。 (文・田中裕子)

第1回はこちらからご覧ください。
第2回はこちらからご覧ください。

民主主義の大実験

佐々木 インターネットの普及により多様性が認められつつあると言われる一方、どんどんクラスタ化している現状もあります。2011年の東日本大震災のころは、反原発派や右翼などあらゆる言説が飛び交い、ぶつかりあっていた。けれど、今や、違うクラスタの人たちは存在していないんじゃないかと思えるほど声が聞こえません。小さなコミュニティに引きこもっている感じがするんですよね。

鈴木 それは、フィルターが「好きなもの」だけだからですよ。今のままだとセレンディピティは起きないでしょうね。ただし、濃淡をつくることによって、固定化されているクラスタとクラスタの間の中間であるグレーゾーンの人を増やすことができるはずです。

佐々木 なるほど。本来、サイレントマジョリティであるグレーゾーンの人こそ世論の土台ですからね。だからこそ、テクノロジーの力を使って濃淡を尊重した情報の流通をつくれば、新しい民主主義の大きな可能性が見えてくるというわけですか。

鈴木 そうです。そういう実験をするフロンティアは、先進国じゃないかもしれません。たとえば、東欧って民主主義に実験的なんですよ。すでにモバイルでネット選挙を実施したり。

佐々木 民主主義の歴史がない国だからこそできる試みですね。

鈴木 もともと、アメリカもそうでしょう。何もないところにわいわい移民がやってきて、「今日からここはオレの土地だぜ!」とゼロから民主主義をつくった。人工的な国家だから、王権神授説から社会契約論を経由したりといった、そういう縛りがなかったんです。ちなみに、ヨーロッパの立憲は「王の権力を削ぎ落としてやる!」がベースです。

佐々木 王制から民主主義へのシフトではなく、ゼロからつくることができたわけですか。

鈴木 当時のアメリカが、人類の歴史上、民主主義の大実験場だったんです。町単位でそれぞれ民主主義をつくるところから始まっているわけですから。そこに、あるフランス人がやってきて、「なんでこの国では民主主義が機能しているんだ」とびっくりして書いたのがトクヴィルの『アメリカの民主政治』という本です。

SmartNewsのビジネスとしては、当然日本やアメリカがベースです。でも、個人的に、「新しい民主主義」という観点では当時のアメリカと同じ「何もない」状態の国に可能性があると思っていて。インドネシアは人口が2億5000万人もいるのに、いちばん売れている紙の新聞の部数は20万部程度です。読売新聞なんて人口1億人で1000万部ですよ。なぜインドネシアではそんなに新聞が読まれていないかというと、20年前まで独裁国家だったからです。日本でいえば明治20年みたいなものです。しかし今、民主主義が根付いてきたところにスマホが普及して、どんな人でもニュースを読めるようになった。これはすごいことですよ。そういうところでSmartNewsが普及したら……もう、最高に面白いですよね!

佐々木 うーん、なるほど。余計な歴史がないから、インターネットやテクノロジーをもとにした新しい民主主義がすぐに成立するかもしれませんね。でも、今の日本は権力そのものを感じない時代だから、初期アメリカのように新しい民主主義を構築することも不可能ではないですよね。SmartNewsが情報の流通基盤となり適切な情報を届けることができれば、マスメディアの再構築になる。これぞ民主主義の大実験ですね。いや、すごいことですよ。

鈴木 ありがとうございます、がんばります(笑)。でも、もちろん、現実的には数世代かかる問題だと思いますよ。僕らの世代で完結する小さな話ではありません。

佐々木 長いスパンで見ないといけないですね。インターネットの普及の副作用として、スパンを長くとるのが難しくなってきているように感じます。「インターネットはもう駄目だ」という人がいるけれど、たかだか20年の歴史じゃないですか。15世紀の活版印刷の発明は17世紀に花開き、産業革命の本当の影響は20世紀に訪れた。目先の十数年を見て判断する必要はありません。

鈴木 そう。僕はいつも、「300年は見てくれ」と言っているんですよ。

佐々木 あはは、気が長いなあ。

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