「餃子の王将」社長大東隆行氏はなぜ殺されたのか――暴力団、半グレ集団、チャイニーズマフィアに食い物にされた裏の実態一橋文哉・著『餃子の王将社長射殺事件』より

2015年01月13日(火) 一橋文哉
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「日本人が中国で商売するには、店舗やオフィスを開設する土地や各種許認可を得るため、地方政府の役人や共産党幹部への根回しが必要。そのために敏腕の現地コーディネーターの確保が重要だが、『王将』はその選任や連携に失敗、仲介に乗り出した地元マフィアとの交渉もうまく行かなかった」(大連市在住の日本人実業家)

さらに「王将」側の現地責任者が勝手に、新しいコーディネーターを雇って、後ろ楯の東北マフィアに特別成功報酬を支払う約束をするなど暴走。怒った大東氏は別に暴力団幹部を通じて大連在住の中国人実業家にトラブル収拾を依頼したため、トリプルブッキングという“最もやってはいけない状態”になってしまっていた。

最初のコーディネーターは、「王将」店舗の真上の部屋を借りて床に水をまき、水漏れで店内を使えなくする嫌がらせを始めた。ほかに仲間が店内で暴れ、食器や窓ガラスを割る騒動も続発した。

一方的に特別成功報酬の約束を反故にされた東北マフィアの代理人は、13年秋から大東社長に強く約束の履行を求めたが拒否されたため、殺し屋を送り込んだ疑いが浮上した。また、大東氏がトラブル収拾を依頼した暴力団幹部と謝礼をめぐって揉めていたとの情報もあり、意趣返しにヒットマンを雇った疑いも捨て切れない。

“裏の懐刀”排斥でトラブルが次々と噴出

こうした“揉め事”が多い理由として、府警は大東氏自らがトラブル処理に当たっていたことが大きいと見ている。“揉め事”自体は古くからあるが、それまでは京都市の不動産関係会社社長・U氏が関係者への根回しや、トラブル処理を一手に引き受けてきた。

U氏はもともと、京都市に拠点を置く同和系団体の中心人物(故人)の実弟で、政財界から闇社会まで幅広い人脈を誇っていた。同じ福岡県出身の朝雄氏とは古くから親交があったが、関係が深まったのは89年に大阪市の「王将」戎橋店で起きた火災からであった。 

同店調理場から出火して6階建てビルが全焼、従業員1人と最上階に住んでいたビルオーナーの華僑夫妻の計3人が死亡した。その夫妻の遺族への補償交渉が華僑仲間や暴力団の横やりで難航する中で、「王将」側代理人として仲介に入ったのがU氏だった。

交渉は97年、「王将」側がビル焼失による損害補償金や夫妻への慰謝料など計約1億5500万円を支払った上、ビル跡地を約8億5800万円で買い取ることで遺族と和解した。が、U氏に支払った謝礼金約1億円を跡地買収経費に混ぜて申告したため、国税局から99年、「悪質な所得隠し」として追徴課税処分を受けてしまった。それ以来、「王将」の裏工作を司る“影の懐刀”として暗躍し、朝雄氏の死後、3代目社長に就いた長男・加藤潔氏の失脚まで続いた。

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