特集 第3次安倍政権
18年までの長期を視野に
アベノミクスの実績、円滑な近隣外交がカギ

記者会見で質問に答える安倍晋三首相=東京都千代田区の自民党本部で14年12月15日

第3次安倍晋三政権がスタートした。盛り上がらなかった年末の総選挙の低投票率は「冷めた信任」と言われたが、衆院では自民、公明両党合わせて憲法改正を発議できる3分の2以上の326議席の巨大与党体制を維持した。長期政権を目指す安倍首相は当面は「経済最優先」を強調する。一方、戦後70年を迎える今夏に発表される見込みの「安倍談話」に内外の関心が高まる。神経戦が続く近隣外交と安全保障、アベノミクスの成否を握る成長戦略と経済政策、地方創生、原発再稼働問題など、課題山積の2015年が始まった。

新年を迎えたこともあり、今年の日本政治を展望してみたい。

安倍首相は、昨年暮れの総選挙で勝利したこともあり、秋の自民党総裁選はクリアーしたも同然だ。「手を挙げる人材はいないのでは」と、派閥の領袖クラスの一人は口にする。衆院議員の任期が切れる2018年までの、長期政権も安倍氏にとっては夢ではなくなってきた。

ただし、それが実現するのには、16年夏の参院選で敗れないことと、国民からの高い支持の継続が条件になることは言うまでもない。この二つの条件を満たすには、先の総選挙で争点にしたアベノミクスの成否を握る成長戦略を具体的に明示し、デフレ脱却を実現、日本経済を再生させた実績を残さなくてはならない。さらに、緊張関係が続いている中国、韓国との近隣外交を円滑化させることだ。

総選挙で大勝した安倍自民党に対し、多くの海外メディアでは、「政治・経済改革を進めやすくなった」と、期待する論調が目立った。他方、韓国の聯合通信は「安倍首相が歴史認識、安全保障、憲法などに関し、本格的右派色を強める可能性が大きい」と、警戒の構えを改めて示した。

毎日新聞が実施した総選挙立候補者アンケートのうち当選者だけで再集計したところ、憲法改正には全体の83%に当たる390人が賛成しており、反対は10%の48人だけだった。自民党では95%、公明党でも76%が賛成だった。焦点の9条改正では、賛成は57%にダウンし、反対が27%だった。公明党は環境権などを新たに盛り込む「加憲」を主張しており、改正の是非を問われれば、賛成に数えられる。だが、具体的な改正点となると、両党の溝は浅くはない。

暮れの総選挙では、自民党だけで3分の2超の議席を確保できなかった。改憲グループだった次世代の党は公示前の17から2議席へと大きく後退した。憲法改正を発議するには、公明党の同意が必須要件になっている。

「私もリーダーシップを発揮しながら憲法改正の論議を進めていきたい」と公言している安倍氏だが、同時に「3分の2の多数派を形成できるものから」とも語っている。国論を分裂しかねない9条改正の是非を問う前に、コンセンサスを得やすいテーマから、自民党は改憲論議を進めようとしている。大規模災害時や有事の際、個人の権利を制限できる緊急事態条項の創設など三つの改正テーマがすでに提案されている。

憲法改正とともに安倍政権にとって外交上の難問になっているのが、中国、韓国との関係回復だ。しかも、今年は終戦から70年。韓国との国交正常化50周年と、二重の意味で節目の年だ。

戦後70年「安倍談話」に世界が注目

20年前の1995年、「戦後50年国会決議」と村山富市首相(当時)の「戦後50年談話」が、世界に向けて公表された。8月の終戦記念日に向けての「安倍談話」の内容が国内外からいやが上でも注視されている。近隣諸国だけでなく、第二次世界大戦の戦勝国でもある同盟国・米国などでも、関心度を高めている。

95年の国会決議も、「村山談話」も、過去の戦争への反省と被害を与えたアジア諸国への反省の念が明記されている。特に「村山談話」では、「わが国は遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対し多大な損害と苦痛を与えました」と、戦争責任を明記している。

「村山談話」路線を継承する内容の「安倍談話」になり得るか、否か。今後の安倍政権の外交・安全保障政策を占う上で、大きな試金石になろう。「村山談話」を出した村山氏は社会党出身とはいえ、当時は自民党も与党の一員だった。「国際公約みたいな性格を持っており、一朝一夕には変更できない」と、某首相経験者は語っていた。安倍氏が目指す憲法改正を軸にしたタカ派路線の浸透度を測る上には格好なテーマだろう。

連立政権のパートナー、公明党が引き続きバランサー役を貫けるかも、大きなポイントになろう。集団的自衛権の憲法解釈変更時には、支持母体の創価学会からも異論が出された。

平和と福祉が、公明党の政策においては2本柱だ。それだけに福祉の面では、安心できる社会保障制度を継続させるよう努めるには、財源問題は避けて通れない難問だ。半面、現行の消費税制度は、低所得者層に重い負担がかかる逆累進性が問題になる。この矛盾の解消策として公明党は、庶民生活に直結した食料品など日用品の課税税率を据え置く軽減税率の導入を総選挙でも主張してきた。

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